第4話 協定 -3

「これは契約書よ。貴方と私のね。」

「内容は何です」

「貴方にはしばらく協会の所属になって、私が依頼した仕事を幾つかこなして貰うわ」

「それがリリィを解放する条件ですか」

「ええ、そうよ。難しい話ではないでしょう?」

「なるほど」


アルベルトはしばらく黙り込んでいたが、徐に用意されたペンを手に取ると、紙の上に自分の名前をサインした。


「これで満足ですか」

「ええ、十分よ。ああ、これで漸く貴方を私の手中に入れるという念願が叶ったんだわ」


シャルロッテは契約書を抱き締め嬉しそうに笑う。


「期限付きですがね。いいですか。シャルロッテ。もし、貴女が約束を破ったその時は」

「その時は、どうするの?」

「協会ごと貴女を焼きつくしてあげますよ」

「まぁ、それは貴方らしいわね。50年前のあの時の様な見事な暴れっぷりを見せてくれるのかしら?」

「あるいはそれ以上の……」

「いいわ。契約書の内容は必ず守ると約束しましょう。貴方が私の依頼した協会の仕事をある程度片付けてくれたら、リリィを協会から解放する儀式を必ず行うわ」


そういってシャルロッテはラルフにも契約書を差し出してきた。


「アルベルトのパートナーである貴方のサインもここにお願い出来るかしら?」


そう言われてラルフも躊躇いながらサインをした。


「これで貴方たちは暫くの間、協会所属の退魔師になるわ。これからよろしくお願いするわね」


シャルロッテはそういうと、二人に向かって恭しくお辞儀をした。




「本当にこれでよかったのか?」


シャルロッテの住むお屋敷からの帰り道、ラルフはアルベルトに恐る恐る尋ねた。


「仕方がないでしょう。リリィを盾に取られては、断る事などできません」

「そうか。そうだよな」

「ごめんね、兄さま。私足手惑いで」


その声を聞いて二人は驚いて振り返った。

そこには小さな四角いボックス型のバッグを持ったリリィが立っていた。


「リリィ、どうしてここに?」

「シャルロッテ様がこれから暫く二人の側にいて、連絡役になれっておっしゃったの」

「ええっ」


ラルフは思わす大声を上げた。

それはまたラルフの家に居候が増える事を意味していたのだった。

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