第3話 協会-5

するとシャルロッテは思いっきり赤面した。


「す、好きとかそんなんじゃないけど。第一天使が悪魔を好きになるなんて、タブー中のタブーだし。ただ、お友達になって、一緒に戦って貰えたらなぁ、何て思うだけよ。ただ、それだけなんだから」


シャルロッテは必死に言い訳をする。

その姿を見て、ラルフは確信した。

それにしても、天使の心まで奪ってしまうなんて流石アルベルトだなあ。

ラルフは心の中でぼんやりとそう考えた。


「シャルロッテ様。そろそろ時間です。」


扉の向こうにいた青年がシャルロッテに声を掛ける。


「そうね。おしゃべりはここまでにしましょう」


そう言ってシャルロッテは立ち上がった


「時間ってもしかして例の儀式?」

「よく知っているわね、リリィから聞いたのかしら?」

「それってどういう儀式何ですか?」

「この街を囲んでいる魔法陣の真ん中に囮を用意して、大悪魔をおびき寄せるのよ。

「その囮ってもしかして、協会と協定を結んだ悪魔ですか?」


するとシャルロッテはラルフの方を振り返らず、入り口の扉を真っ直ぐ見据えてこう

言った。

「囮は、私自身よ」




シャルロッテが立ち去って間もなくした時、客間のバルコニーの黒く大きな影が降り立った。

ラルフが振り返るとそれは地下牢から自力で脱出したアルベルトだった。


「アルベルト」


ラルフは小声で彼の名前を呼びバルコニーに出た。


「よかった。無事だったんだな」


するとアルベルトはラルフの唇に人差し指を当てる。


「あまり大きな声を出さないでください。それより早くここから逃げますよ」


そういって、アルベルトはリリィの方を見た。

するとリリィは小さく首を振る。


「私は今、シャルロッテ様の秘書をしているの。だから、一緒には行けない。」

「協定を解いてもらうことは出来ないの?」

「それは無理だと思うわ。リヒト・クライノートは一度手にするとそれを手放す事は、死を意味するとシャロッテ様が言っていたわ。」

「あの白い悪魔め。余計な事を」

「私は大丈夫だから早く言って、兄さま、ラルフ」


アルベルトは渋々頷いた。


「また会おうねリリィ」


ラルフがそういうとアルベルトは彼を抱えて、空高く舞い上がった。



それから間もなく、魔法陣の中心に向かっていたシャルロッテの元に訃報がはいる。


「アルベルトがどうやら地下牢から脱出し逃げたようです。」


白装束の青年がシャルロッテにそう告げる。


「そう、やはり大人しくはしてくれなかったようね」


シャルロッテは平静を装っていたがその眼には涙がいっぱい溜まっていた。


「シャルロッテ様。泣かないで」


退魔師の一人が声を掛ける


「泣いてないもん」


シャルロッテは強がって涙を拭いた。



魔法陣の中心にはすでにライナーが待機していた。


「遅かったね、シャルロッテ」

「私にも色々準備が在るのよ」

「オッドアイの悪魔と長話するのが、今回の儀式と何の関係が在るのさ」

「う、煩いわね。それで今回の標的は現れそうなのかしら」

「東方の街をひとつ滅ぼしたと言われる隻眼の大悪魔。本当に封印出来ると思うのかい?」

「出来るかできないかじゃない。やるのよ」


シャルロッテはそう宣言すると、暗い雲で覆われた夜の空を見上げた。

今夜は街中の人が家に籠って、儀式に備えているため、街の外は静まり返っている


「なるほどね、君のそういう強気なところは嫌いじゃないよ」


ライナーはそういうと微かに聞こえてきた人成らざる者の足音に向かってツヴァイ・メッサ―をスラリと抜いた。

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