第3話 協会 -4
(き、気になる)
ラルフは眉根を歪めた。
(さっきから彼女のドレスの裾はどうして捲れ上がったままなんだ。しかし、それを指摘するのも失礼だし。でも、それが気になって話が全然頭に入ってこない)
ラルフの額に冷汗が流れる。
(言うべきか言わざるべきか)
ラルフは究極の選択を迫られていた。
すると、隣に座っていたリリィが徐に立ち上がり、シャルロッテに近付いた。
「どうしたの?リリィ」
シャルロッテが首を傾げる。
「シャルロッテ様、スカートの裾上がってる」
と言って、シャルロッテのスカートを整える。
「ふえぁ」
すると、シャルロッテは奇妙な声を上げて赤面した。
「違うの。これは、トイレに行った時に整え損ねたんじゃなくて、お、オシャレなのよ、オシャレ」
「じゃあ元に戻す?」
リリィが訊くとシャルロッテは慌てて首を振る。
「いいえ、その必要はないわ。さぁ、リリィ。席に戻って頂戴」
どうやらシャルロッテが天然と言うのは本当の様だ。
何はともあれ危機は去った。
これで話に集中出来そうだと、ラルフは胸を撫で降ろす。
「一つ聞きたいことがあるんですが」
「何かしらラルフ」
シャルロッテは畏まって、ラルフみた。
「協会が悪魔と結ぶ協定って何ですか?」
その問いを聞いて、リリィが身を固くする。
「気になるのかしら?」
「とても」
するとシャルロッテはラルフの目の前の席に座り。一つの石を取り出した。
「これはリヒト・クライノート。私が作り出した悪魔にとって万能な石なの。私はね、無暗に悪魔を祓う事を良しとしていないの。だからこの石を与える代わりに人間を襲わない。また、退魔師の仕事の邪魔をしないと悪魔達に誓って貰うのよ。それが協定」
「アルベルトは貴女がリリィを騙して協定を結ばせたと思っているみたいだけど」
「それは、大きな誤解だわ。確かにあの時は時間がなくて、詳しい説明を省いたけど、リリィは自分の意志で生きる道を選択した。ただそれだけよ」
「いつか兄さまに会わせてくれるっていうのも嘘じゃなかった?」
リリィが尋ねる。
「ええ、そうよ。ほとぼりが冷めたら彼の封印を解いて協定を結んで欲しいとお願いするつもりだったのよ。今回は貴方に先を越されてしまったけれど」
シャルロッテはラルフの方を見た。
「貴方はアルベルトに協定を結ばせたいんですか?」
「ええ。そうしてこの協会で働いて貰うのよ。現に悪魔で在りながら退魔師の仕事を手伝ってくれている子は何人かいるの。そういった子たちが悪魔の中で裏切り者と呼ばれているのは心が苦しいところだけど」
「どうしてそこまでアルベルトに執着するんですか?」
「それは彼が悪魔では珍しいオッドアイだからよ。オッドアイの悪魔は秘めた力を持っていると言われているの。」
「でも彼は悪魔の中で半端者と呼ばれていまましたよ。」
「それは彼がリリィと双子だからね。双子の悪魔は生まれつき魔力が弱いとされているの。特にリリィはサキュパスで在りながら異性を誘惑して魂取る能力がないから、アルベルトに魔力を分けて貰って生きていたの」
「それって矛盾していませんか?」
「何がかしら?」
「だってオッドアイの悪魔は秘めた力を持っているけど、双子だから半端者なんですよね。確かアルベルト自身も自分は他の悪魔より魔力が弱いと言っていたし。そんな曖昧な存在にどうして貴女は執着するんですか?この協会にはライナーの様な強い退魔師もいるのに」
「でも、彼は貴方と出会ったわ」
「俺と?」
「そう、きっと彼が本領を発揮するのはこれからだわ。今までだって魅力的だったけど、これから彼はどれ程の強さを発揮するのか未知数なの。だからこそ今、協定を結んで私の手元に置きたいんだけど、なかなか上手くいかないのよね」
シャルロッテはしょんぼりと肩を落とした。
「無粋な事を聞きますが」
「何かしら?」
「もしかして貴女はアルベルトの事が好きなんですか?」
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