第2話 再会 -7

「随分と抵抗してくれたけど、ここまでの様だね。もう少し楽しめると思ったのに残念だな」

「さっきから聞いていれば、楽しいとか楽しくないとか。君は戦いを遊びだとでも思っているのですか?」

「そうは思ってないよ。ただ戦いは僕にとって生きる意味なんだ。って、こんな話、今から死ぬ君には関係ないよね」


そう言ってライナーは再びツヴァイ・メッサ―を構える。

そこから鋭い風が巻き起こり、あたりの瓦礫を傷つける。


「これで終わりにしようか」


ライナーが宣言すると同時にラルフは咄嗟に二人の前に立ちふさがっていた。


「ラルフ」


アルベルトが驚いて声を上げる。


「どいてくれないかな。僕は人間を殺す訳にはいかないんだ」


ライナーは苛立ちを露にする。


「だったら尚更どけません」

「君はその悪魔と契約をしているのかい?だったら尚更ここで手を切った方がいい。身を滅ぼすだけだよ。」


そう言われればそうなのかもしれない。どんな形で在れ、悪魔と一緒に居れば人間であるラルフは滅びの道を歩むのかも知れない。では何故、ラルフはアルベルトを救おうとしているのか。

ラルフにもはっきりとは分からなかった。

ふと、ラルフはリリィの方を見た。

彼女は兄の身を案じるあまり目に涙をいっぱい貯めて、今にも倒れそうだった。

それを見てラルフは言う。


「どんな理由があっても、女の子を泣かせる様な事は許せません」


その答えを聞いてライナー僅かに笑うと、そっとツヴァイ・メッサ―をしまった。


「成程、君は根っからの紳士というわけだ」


そういう訳ではないけれど、今はアルベルトを庇う理由がそれしか思いつかなかった。

アルベルトと出会った頃に言った一心同体だからという思いはもちろんある。でもそれだけではライナーを納得させられそうになかっ

たのだ。


「けれど、貴方たちを見逃す気はないわよ」


どこからともなく透き通った声が聞こえてきた。それは数日前、ラルフの夢の中に出てきた少女の声だった。

その少女が徐にライナーの背後から現れる。


「ご苦労だったわね、ライナー。アルベルト

をここまで追いつめるとは流石、協会のエースだわ」

「別に君の為にやったわけじゃないけどね」


ライナーは冷徹にいうと、その場を去って言った。


「さて、久しぶりね。アルベルト。」

「そうですね。50年前のあの夜以来だ。

貴方には聞きたいことが山ほどある」

「そう。奇遇ね。私も貴方には話したい事が山ほどあるわ」


少女はそういうと部下に命じて、アルベルトを拘束した。


「いきなり何をするんだ」


ラルフが叫ぶ。

そんなラルフの目を見て、少女は「クスリ」と笑った。


「オッドアイ持ちの人間とオッドアイ持ちの悪魔の組み合わせね。なかなか珍しいわ。貴方にも色々お話を聞かせて貰おうかしら。リリィ、彼を協会の支部までお連れして」

「はい。シャルロッテ様」


そう答えると、リリィはおずおずとラルフの手を取った。

その手はまだ僅かに震えている。

先ほどまでの戦いがよほど怖かったのだろう。

ラルフはリリィが気の毒になった。

それに、リリィがあの少女に騙されて協会に入ったというのは、本当なのだろうか。

何にしてもあのシャルロッテという少女は只者ではなさそうだ。

ラルフは白い装束を着た男たちの先頭を歩く白いドレスの少女の背中を無意識にきつく睨んでいた。

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