第2話 再会 -6
青年は黒髪でその細身の体に白い軍服の様な服をまとっていた。
それにしても、今日は色々ありすぎて、脳内のキャパシティーがオーバーしていたラルフは
(何でみんな高いところが好きなんだろう)
などと、どうでもいい事を考えていた。
「君は誰ですか?その装いから見て協会の人間で在る事は確かな様ですが」
どうでもいい事を考えてボーッとしていたラルフの隣で、アルベルトが冷静に尋ねた。
「それも併せて後で教えてあげるよ。この僕に勝ったらね。」
青年はそういうと腰に光るクリスタルに手をかざすと
「ツヴァイ・メッサ―」
と唱えるとその両手に銀色に光る双剣を召喚する。
そして、そのままいきなりアルベルトに攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃をアルベルトは咄嗟にシュバルツ・シュペーアの柄で防ぐ。
「さっきの君とインゼクトとの戦い、なかなか面白かったよ。今回の仕事は退屈で詰まらない物になりそうだと思ってたけど、君みたいな悪魔がいるならなかなか楽しめそうだね。」
「君が誰なのかは分かりませんが、お褒め頂いて光栄ですよ。」
二人は交えていた武器を弾き、一度間合いを取った。
しかし、しっかり力強く立っている青年に対し、アルベルトの足元はふら付いていた。
さっきのインゼクトから受けたダメージがまだ残っているらしい。
そんな事には構わず、青年は激しく鮮やかな攻撃をアルベルトに浴びせかける。
青年の力強い攻撃を何とか受け止めていたアルベルトだったが、ついには大きく弾き飛ばされ、激しく壁に叩きつけられる。
「アルベルト」
ラルフは叫んだが、アルベルトはどうやら気絶しているらしい。
空からはいつの間にか灰色の雨が降っていた。ラルフは急いでアルベルトの側に駆け寄る。
一方、リリィは青年の腕にすがりついていた。
「ねぇ、もう止めて。ライナー。彼は私の兄さまなの。それなのに倒そうとするなんて、話が違うわ。」
「君があの人とどんな約束を交わしたかなんて、僕には関係ないよ。それよりも今回の任務は協会と手を組んでいない悪魔を殲滅するというものだったはず。僕はその任務を遂行しようとしているだけだよ。」
「そんな」
リリィは愕然としてライナーを見つめた。
「それにしても拍子抜けだな。さっきまでの彼の強さは何だったんだろう。」
ライナーは気絶しているアルベルトを見て、つまらなさそうに呟く。
「アルベルト」
ラルフが声を掛けるとアルベルトは何とか目を覚ました。
「アルベルトよかった」
「何をしているんですか、君は早くリリィを連れてこの場から離れてください。彼は強すぎる。この僕でも勝ち目はないかも知れない」
「だったら尚更、お前を置いていくわけにはいかないよ。それにほら、魔力を補給すれば何とかなるかも知れない」
ラルフは躊躇いながら、自分の唇をアルベルトの唇に寄せた。
しかし、それをアルベルトは片手で遮る。
「何だよ、今更いやだって言うのかよ。そりゃ俺だって嫌だけどさ。今はそんな事言っててる場合じゃないだろ」
「そうじゃありませんよ。今日はこれ以上君から生気を奪うと、君が死んでしまう可能性があるんです」
「そんな」
「君が死ねば僕も死んでしまいますから。そんな共倒れはごめんです」
そう言ってアルベルトはゆっくりと立ち上がった。
「アルベルト!もう無理だって。ここは一端逃げよう」
「そんな事を彼が許してくれますかね」
立ち上がったアルベルトをみて、感心した様
にライナーがため息を吐く。
「彼はまだ僕と戦う気みたいだね。なるほど、その根性だけは認めてあげるよ」
ライナーは再びツヴァイ・メッサ―を構え臨戦状態に入る。
「もうやめてお願い」
リリィが叫ぶがその声はライナーに届いていない様だった。
再び二人の激しい攻防が始まる。
そのスピードはラルフの目では負えないほど早く、時折カメラのフラッシュの様な光が見えるのみだった。
すると突然、鋭い風が巻き起こり、それがあるアルベルトの全身を切り付けるのが見えた。
アルベルトの体がゆっくりと地面に倒れていく。
それをライナーは余裕の表情で見下ろした。
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