第2話 再会 -3

ラルフの学校では年に一回、隣街の繁華街で

生徒たちが働く人たちの手伝いをするという校外学習が行われていた。

誰がどの店を手伝うのかは班分けで決められていて、ラルフとアルベルトはカフェの手伝いをする事に決まった。

その中でもアルベルトはギャルソン。

ラルフは厨房の手伝いをして欲しいと店長に言われ、それぞれ与えられた持ち場に着く。

すると、開店後一時間もしないうちにカフェの前に長蛇の列ができた。

原因はやはりアルベルトである。

彼は黒いカフェの制服を見事に着こなし、カフェのやってくる女性たちをまるで令嬢や淑女の様に扱ったので、女性たちはのぼせ上り、

この突然現れた美貌のギャルソンを一目見ようと、街中の女性たちが集まってきたのである。

そのお陰で、午前中だけでも通常の3倍をい売り上げるという盛況ぶりだった。

一方、その頃厨房ではラルフが皿洗いとしてこき使われていた。

少しでも遅れると先輩たちの怒号が飛んでくる。

優雅なカフェの裏側にあるのはこの様な洗浄なのかと、ラルフはうんざりしながらひたすら手を動かしていた。

それにしてもこんな場所でもラルフとアルベルトの扱いはこんなにも違う物なのか。

ラルフは世の中の理不尽をこの校外学習で学んだ。


「おい。ラルフ」


不意に厨房の先輩に声を掛けられ、ラルフは振り返る。

やっと休憩時間かと思ったが違っていた。


「このゴミを店の裏に出してきてくれ。」


(なんだ)


とラルフは肩を落とし、ゴミ袋を受け取って店の裏口から外に出る。

それから路地裏にあるゴミの集積場にゴミ袋を捨てると、店に戻ろうと踵をかえした。

するとその少し先のレンガ造りの道の上で黒髪の少女が蹲っていた。

何か探し物をしているのだろうか。


「困ったわ。あれがないと私……」


などと呟きながら少女は何かを探るように地べたを這っている。


「どうしたの?」


ラルフが声を掛けると少女は大げさに飛び上がった。


「いえ、あのちょっと……」


少女は涙目でもじもじしている。


「何か探し物?」

「あ、はい。そうです。」

「何を探しているの。」

「あの、ペンダントです。丸くて青い石の付いた」

「ペンダント?よかったら一緒に探してあげようか?」

「あの、でも。悪いですし……」

「いいよ。いいよ。時間もあるし」


ラルフはそう言いながら、仕事をさぼる口実が出来たと、心の中で喜んだ。


「それじゃあお願いします。あれがないと私本当に困ってしまうんです。」

「それじゃあ、早く見つけた方がいいよね。この辺りで落としたの?」

「それがよく分からなくて。あっちの路地かも……」

「なら、あっちも探してみよう」


ラルフが少女を連れてカフェを数百メートル離れた時


「こらぁ」


という叫びと共にアルベルトがカフェの入口から走ってきた。


「あまり僕から離れるなと言っているしょう」

「そんなこと言われたって限度があるよ。俺にだって色々と事情が」

「与えられた仕事をサボるほどの事情が今の君に在るというんですか。」

「人助けだよ、人助け」


そう言ってラルフが少女を見ると、彼女の目が明らかにキラキラと光っているのが分かった。彼女もアルベルトの美貌に捕らえられてしまうタイプの女の子なのだろうか。

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