第1話 邂逅 -6
「やれやれ、先ほどの僕とは比べ物にならな
いと、このオーラを見てもまだ気づかないとは。それだからお前は小物だと言うのです」
「何だと!?」
「冥途の土産に見せてあげましょう。僕の本当の力を……」
アルベルトはシュバルツ・シュペーアと手前に突き出すと弧を描くようにそれを素早く回し始めた。そこから先ほどパトリックが出した水の玉とは比べ物にならないほどの大きな青い炎が生み出されていく。
その炎が爆風と共にパトリックを飲み込んでいった。
「ぐわぁぁ」
パトリックは黒焦げになって地面に落下していく。
しかし、アルベルトの攻撃はそれで終わりではなかった。
「これで最後です!」
そう宣言すると、地面に倒れているパトリックに向かって一気に急降下する。
落下の勢いに任せてアルベルトがシュバルツ・シュペーアの切っ先をパトリックに突き立てると、パトリックの体はパァンと大きな音立ててまるで風船の様に割れてしまった。
その様子を見ていたラルフはただ唖然とするばかりだった。
「全く、小物の癖に調子に乗るからです」
アルベルトは黒いマントを翻し、呟いた。
「本当に勝っちゃった」
「だから、本来の僕がパトリック如きに負けるはずはないと言ったでしょう」
「いやぁ、口から出まかせかな?と思って……」
「失礼な」
「でも俺、悪魔が消えるところを始めてみたよ。みんなあんな感じで消えちゃうの?」
「いいえ、パトリックは肉体を持たない小物だからです。僕の様に肉体を持つ悪魔は死んでも消えたりせず、遺体が残ります。」
そこでアルベルトは少々複雑な表情を浮かべた。
それを見たラルフは何か悪いことを聞いた気がした。
「でもまあ、あの悪魔を倒してくれて、助かったよ、ありがとう」
そう言ってラルフは笑顔をアルベルトに向けた。
それを見たアルベルトはラルフからふいと目を逸らす。
そうして
「別に君を助けたつもりはありませんけどね」
と彼らしい台詞を返してきた。
「でも……」
とアルベルトが何かを言いかけた時、ラルフは公園に設定された時計を見て大声を上げる。
「あぁぁ」
「何なんですか、いきなり」
「もうこんな時間だ。母さんに買い物を頼まれてたのに!」
とラルフは慌てて駆け出す。
すると
「いったぁ」
と言うアルベルトの声が背後から聞こえてきた。
振り返るとアルベルトが涙目でラルフを睨んでいる。
そう二人の間には一つ大きな問題が広がって居たのだった。
場所は変わって街の住宅地。
ラルフは重い足取りで自分の家の玄関を開けた。
そんなラルフを彼の母親が明るい声で出迎える。
「お帰りラルフ。遅かったわね。あら、そちらの人はお友達」
帰ってきたラルフに母親は彼の後ろに立つアルベルトを見てそう言った。
「うん。まあ、そんなとこ……」
ラルフはげんなりしながら母親にそう答えた。
その頃
アルベルトが封印されていた地下室では、白いマントを羽織った男たちがうろついていた。
その中に一人白い髪に白いドレスを身にまとった少女がいた。
彼女は割れたクリスタルの破片の一つを手に取って見つめていた。
「シャルロッテ様、これは」
「ええ、分かっています」
シャルロッテと呼ばれた少女は立ち上がり、地下室の中を見渡す。
そして、固く唇を結んだ。
「この封印はそう簡単には解けないはず。一体誰が……」
あとがき
ここからラルフとアルベルトの戦いが始まります。
この小説が面白いと思ったら、いいねして貰えると嬉しいです。
創作の励みになります☺️
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます