第1話 邂逅 -4
「まてぇ、オッドアイの人間」
パトリックの鋭い爪がラルフの右腕を捕らえた。
「うわぁぁ」
その勢いに弾かれ、ラルフはその場に倒れる。
ラルフの右腕から血が滲みだし、傷口が酷く痛んだ。
「やっと追いついたぞ。手間をかけさせやがって」
パトリックはそうに苦々し気にいうと、その大きな口をラルフの目の前で開けて見せた。
今度こそ万事休すか。
と、思われたその時、蒼い炎がパトリックを包んだ。
「ぐあぁぁ」
パトリックが咆哮する。
ラルフが何事かと思った時にはすでに、アルベルトがその大きな漆黒の羽を広げ、ラルフを抱えて空を飛んでいた。
さっきの炎はアルベルトの仕業だったのだろうか。
彼の行動は出会った時から一貫性が無くて訳が分からない。
アルベルトは屋敷を離れ、森の中に入るとラルフを降ろした。
そして側にあった気に片手をつくと、また大きくため息を吐く。
「さっきからお前は一体何なんだよ!」
出会った時からアルベルトの言動に振り回されっぱなしのラルフは苛立ちをアルベルトにぶつけた。
するとアルベルトはゆっくりとラルフを振り返る。
「君は僕を起こすとき、何かしらの儀式を行いましたか?」
「いや、全然。何気なくクリスタルに触っただけだけど」
「なら何故僕と君は主従契約を結んだ事になっているんですか?」
「主従契約?」
「人間と悪魔の間で結ばれる契約の事です。通常は契約書を交わし、人間の願いを叶える代わりにその人間が死んだとき、悪魔は相手の魂を回収できる」
「じゃあ俺が死んだら、お前に魂を取られるってこと?」
「それは分かりません。何故なら君と僕は正式な契約の儀式を行っていませんし」
そこでアルベルトは言葉を区切った
「通常悪魔は主人が傷ついたからと言ってダメージを受けることはありません」
アルベルトはスーツの腕を捲ってラルフに見せてきた。
そこには先ほどラルフがパトリックから受けたのと同じ傷が刻まれていた。
「そんな、どうして?」
「分かりません、とにかく君が傷つくと僕もダメージを受けてしまう様です。それに君から一定の距離を離れると、この赤い左目が痛むのです」
そこまで聞いてさっきまでの一貫性のないア
ルベルトの行動には全て意味があった事にラルフは気づいた。
「その主従契約といのはどうやったら解けるの?」
「一般的には主人が死ねば解けますが、僕となった悪魔が主人を殺すのは基本的にタブーとされています」
「でもさっきお前は俺を殺そうとしたよな?」
「タブーを犯しても主人が死んだときに魂が取れなくなるだけですから。それなのに何故か君を殺そうとした時もこの左目が痛んだのです。どうやら僕の間に結ばれた契約は通常の物と異なっているようですね」
アルベルトは忌々し気にラルフをみた。
「だから俺は何にもしてないって!」
「考えられるのは君と僕はお互いにオッドアイだという事。そこに鍵がありそうです」
「えっ?この目が?」
「詳しく分かりませんが、おそらくは……」
アルベルトがそこまで言ったとき、突如パトリックの鋭い爪が彼を襲う。
「くっ……」
アルベルトは咄嗟に振り返りシュバルツ・シュペーアを盾にして、攻撃を防いだ。
「パトリック。この僕の炎を受けてまだ生きているとは」
「半人前の攻撃なんかこの俺様に利くもんか。それよりさっきはよくも裏切ったな。もう絶対許さないもんね。オッドアイの人間の前に、まずお前から食ってやる」
逆上しているパトリックは2発3発と連続してアルベルトを攻撃する。
反撃する暇もない激しい攻撃に、アルベルトはどんどん後方に押されていく。
「これで終わりだよ!」
その台詞を合図に大きな一撃がアルベルトを襲った。
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