第1話 邂逅 -3
しかし、ラルフが青年から数百メートル離れた時、青年が彼の後を追いかけてきた。
まだ、5分も経っていないはずなのに、どうしてなのだろう。
そういえば悪魔とは気まぐれで約束を守らない生き物だった。
ラルフは慌てて走るスピードを上げる。
「ちょっと待ちなさい」
アルベルトが背後から声を掛けてくる。
「待てるわけないよ」
ラルフは懸命に走ったが、もともと運動神王王経の鈍い彼の事である。
すぐにアルベルトに追いつかれてしまう。
「待ちなさいと言っているでしょう」
アルベルトがラルフの腕を掴んだ。
「何?まだ約束の時間じゃないだろ」
ラルフが怯えながら振り返ると、アルベルトは「はぁ……」と重く息をはいた。
「やはりそうか」
と一人納得したように呟くと、いきなり黒く光るシュバルツ・シュペーアをラルフに向けて振り上げる。
「やはり僕にとって君は目障りな存在だ。申し訳ないがここで死んでもらいます。」
「そんな、いきなりすぎるよ」
ラルフが叫ぶと同時にアルベルトが左目を抑えながらその場に蹲る。
「だ、大丈夫?」
今まさに自分を殺そうとしていた相手を思わず気遣ってしまう。
ラルフはそういう少年だった。
「人の心配をしている場合ですか。しかし、自ら手を下すこともできないとは」
青年は何やら思い悩んでいる様子だった。
「どうかしたの?」
ラルフが尋ねると青年は赤い瞳でラルフを睨んできた。
「君が僕にとって厄介な存在になってしまったということですよ」
「それだけじゃ、意味が分からないよ」
「うるさい人ですね。それなら教えてあげますよ。君は……」
アルベルトが何かを話しかけた、ラルフの背後に大きく黒い影が現れた。
それはさっきラルフを追いかけていたあの悪魔だった。
「みぃつけた」
「うわぁぁ」
ラルフは叫んだ。
「ああれ、出来損ないのインキュパス、アルベルトも一緒だ」
「久しぶりだな、パトリック。しかし、小物の前お前にまで出来損ない扱いされたくないな。だが、丁度いい」
アルベルトはそう言って、ラルフの体を後ろから羽交い絞めにした。
「この少年を今ここで殺してくれたら、その魂はお前にくれてやろう」
「あえぇぇ?」
あまりの事にラルフは素っ頓狂な声を出してしまう。
「いきなりどういう事だよ?」
「いいから僕のために黙って死になさい」
「そんな事言われても、死ねるわけないだろ!」
ラルフはアルベルトの右足を思いっきり踏みつけ、相手が怯んだ隙に、彼の腕をすり抜け逃げ出した。
そのあとをパトリックと呼ばれた悪魔が空かさず追いかける。
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