第10話 FHチルドレン『キャラ』
『もっと強くなるためにあなたを殺す。生きたいなら私を殺してみろ。』
私はここに来てからいつもこう言う。
私はこのセルが好き。私をここへと連れてきてくれた『十面相』さんも好き。セルリーダーさんも好き。ここでいろんなことを教えてもらった。ここで私は救われた。でも、楽しく遊ぶのは結構大変だった。いつか死ぬかもしれないスリルがたまらず、『十面相』さんにまで手を出した。けどもみんな強かった。
今思うとひどい父親と母親だと思うよ。昼間から酒飲みまくって、常にアルコールの匂いがした。鼻にきつ過ぎだよ。母親はヒステリックな感じだった。いきなり声を荒げて怒ったり泣き出したり、笑いだしたり。泣くのか笑うのかどっちかにしてよ。今思うとものすごくうるさかった。父親と母親はよく喧嘩してた。父親はキッチンをめちゃくちゃにして母親はそれを片付けた。私はそれを部屋の隅で聞いていた。
ある日、父親が母親を殺した。喧嘩の果てについに殺した。包丁で何回も刺してた。ぐちゃぐちゃ音がしていた。私はその様子を見て、父親に気付かれて、包丁持ってお前も死んでくれよって襲ってきた。大人の男性なんて勝ち目ないからすぐに包丁で刺されちゃったよ。その時に気づいた。あ、死んじゃうって。死にたくないって。・・・今は何か、思わないんだよね?なんでかな?
私は死ななかった。包丁を私に刺す父親に言った。理想の家族になってよって。刺されて流れ出た血からナイフを作った。私の手に握りやすい物を考えて作って、すぐに父親に刺した。びっくりした顔が最高だったね。刺したナイフを足で蹴って更に深く差し込んだ。場所はもちろん心臓。骨の場所は本で読んだ。骨と骨の間にナイフの刃を差し込んで心臓にぶっ刺した。しっかりやるとこんなにもすぐに死んじゃうんだなって思った。覚えた。
それっきり家は静かになった。仕方ないから欲しい物は殺して手に入れた。次に相手が動く場所を考えておびき出して、先回りして、殺した。食べ物とか服とか。でもたくさん殺しているうちに警察の人が来たんだ。あまりにもしつこいから何人も殺した。一日で多い時は6人。すごく疲れた。殺さないと休むことすらできなくなったし。いつか殺すことで欲しい物をすべて手に入れてた。殺すほどに私はどう殺せばすぐに死ぬのか、殺し方を覚えてた。
ある日、姿を変える人を見つけた。その人はすごかった。壁をすり抜けて、砂が舞って、音もなく殺した。その人は真っ黒な布と仮面を被っていた。私はその人を知りたくなって後ろから思いっきり刺してみた。けどもその手を掴まれて刺せなかった。すぐさま新しいナイフを作って空いているもう片方の手で握って振り払うように向けた。掴んでいた手を放すことなく、私の後ろに回って足を蹴られた。そのまま倒れ込んで地面につく前に手に掴んでいたナイフを口で咥えて、相手の足に刺した。びっくりして手を放してもらえた。ひらりと黒い布が舞って、灰色の仮面が私を見ていた。足に刺さったナイフを抜いて投げ返してきた。私はそれを取った。
そこからその人とお話をたくさんした。知りたくなった。何でそんなに強いのか、なんで仮面なんか被ってるのか。たくさん話したら知らない知識が増えた。それからセルに招待してもらった。セルはすごい所だった。氷と炎と風を操る人に、片腕が機械の人、たくさん遊びたがる女の子、1人なのに2人いる双子の子、狼の人。たくさんいた。中でもセルリーダーさんが好きだった。仮面の人、『十面相』さんも好き。私に色々なことを教えてくれて、生きる方法を教えてくれた。
セルリーダーさんと契約をした。生きる為に。私の欲しい物をもっと手に入りやすくする為にしてもらった。代償はちょっと重たいけど。
契約で得たのは不死者の力。代償に戦闘狂を貰った。不死者ってのは死なないの。そしてジャームっていう化け物にならないんだって。これならたくさん殺してたくさん力を付けれる。代償は殺したくて殺したくて仕方なくなる物だった。殺すためならば、自分の命すら投げるまでに。・・・あれ?
けども、なんでかな。欲しい物は殺して奪う。だってそれはその人が持っていたから。その人から欲しいと思ったから。でも、ここに来てからなんだ変わった気がするの。だって、人が欲しいだなんて思っちゃったんだから。お友達が欲しいって。でもお友達って生きてなきゃいけないんだよね・・・。うーん。あ、お友達が誰かに殺されたり、奪われたりしないようにしよう!そうしよう!
宝箱の中にしまってあげるみたいに。赤い鍵を使って。ぬいぐるみは欲しいお友達に似ている動物を使って。お友達を手に入れるために殺す。そして守るために殺す。あ、そうそう。私のお部屋にはねオレンジ色の毛を持つ大きな犬のぬいぐるみがあるの。セルリーダーさんに頼んでプレゼントしてもらっちゃった!!これにはね、十面相さんって刺繍したの。十面相さん、オレンジ色の髪の毛してて、身長高いから。あと、首には水色のリボンをつけてあげよう。これで完成。この大きなオレンジ色の犬のぬいぐるみは私の大好きな人。
表に出ればどっかの通り魔殺人事件の犯人。欲しい物はすべて殺して奪う。殺せるものなら殺してみな。そんなことから名付けられたのは『キャラ』。
またの名前を『不死者』。
追記
あるシナリオにて『キャラ』
『ブラットバウル』血塗られた被害者 まっちゃぁぁ @mattyaaa
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