第6話 FHマスターエージェント『テルプ』『ラネル』
『私は従えて。僕は実験して。私と僕で一つの結果を出そう。』
私たちは2人で1つみたいな感じだった。常に2人で実験してた。元はライバルだったんだけどね。名門の化学大学で会ったんだ。実験することは意気投合したけど、競争の場でもあったからライバルでもあった。どっぷりと化学と実験、問題を解くことに執着した。
僕らはよく教授を驚かせた。教えることは無いとまで言われるようにもなった。たまにその好成績が讃えられて高校の講演会にも呼ばれた。そんなのどうでもよかったけどね。ただ問題を解き続けて見続けるのが楽しかった。僕は特に観察実験が好きだった。植物からネズミを使った実験までね。
私たちは調べていくにつれて、あることにたどり着いた。それはレネゲイドウイルス。この世の表に出てないものだと気づいて新発見をしたんじゃないかと喜んだ。すぐさまその実験を解析をした。いつの間にか記憶がなくなってた。
僕らはUGNに見つかった。一般人が関わってはいけないと記憶を消された。それからは一体何に狂うほど研究していたのか思い出そうと必死だった。あれほどに執着したものは何だっただろうかと。実験したファイルやデータを片っ端から探した。けども見つからなかった。僕らは意地でも探した。実験をやり直した。
続けていたら次はFHに目を付けられた。そこはとんでもなくいい場所だった。記憶を消すこともせず、むしろさらなる実験の幅が広がった。ネズミなんてものじゃない。人体実験までに上った。私たちはそれに触れたばかりに能力を持った。実験していたものに自分までもがなってしまうなんて顔が火照った。笑いが出てきて仕方なかった。
僕らはそのままFHに入って実験を続けた。ただ問題を解きたいと、更なる発見を見たいと。他者から見れば狂った男女と見られたか。気持ち悪いと僕らの所にはセルリーダーしか来なかった。彼は僕らの実験をよく手助けしてくれた。実験の手配もしてくれた。彼は僕らにとって都合のいい人だった。
私たちは調べていくにつれてある物に執着した。それは意思を持った物。RBだった。彼らは様々な過程で意思を持ち、人を知りたがる。そして目的も様々、能力も様々。とても実験し甲斐のある物だった。私たちはRBを捕まえては生命活動が途絶えるまで使いつぶした。強い特性の薬品までも使って観察した。その結果RBを私の能力を使って従えたり発狂させてみたりとして欲求を満たした。
僕は観察してた。自分の能力も使った。考えられるすべてを尽くして捧げた。僕らは満足していたつもりだ。そのはずだった。
私たち2人で1つの称号を貰った。マスターエージェントになった。私としてはこれもどうでもよかった。けどもその地位のおかげでさらにやりやすくなった実験もあった。私は一人で実験するようになった。なぜか彼はふらりとどこかへ行くようになった。
僕はもっと欲しくなった。もっと見たくなった。いつの間にか実験ではなくRBを檻に閉じ込めて理想の姿として見続けることが目的になってしまった。そのためによくセルリーダーの手を焼かせた。僕はその時1つのRBにしか執着しない。そのRBが死んだときに次のRBになる。僕は捕まえたRBを死ぬまで観察した。その時が一番幸せだった。
彼はなぜ見ているだけなのだろうか。記録も取らず、ずっと檻に閉じ込めた1つだけのRBを常に見続ける。見ているときに話しかけると怒る。これには困った。元からお互い、利用していただけに過ぎなかったかもしれない。変に気にし、それを隠すかのように私も実験に戻った。 それっきり、たまに話すことしかしなくなった。
僕らは2人で1つ。だけど実験に対する執念がお互いにあっただけのことだった。それ以上の関係も必要性も無かった。そこにいるだけの実験仲間。同僚とも言うだろうか。彼女は恍惚とした表情を浮かべなくなった。たまにイライラしているのだろうか、用済みになったRBを虐殺していた。その姿は何か言いたそうな感じだった。
私はセルリーダーに頼んで契約をしてもらった。すべての思考を実験へと向けられるように。変に関係のない別なことを考えて気が散ると言った。セルリーダーは承諾してくれた。だが、それが本当の理由じゃないだろうと言ってきた。ただの都合のいい人だと思っていたがこうなるとさすがリーダーと言ったものか。本当の理由は彼にあった。前のように実験に没頭するだけでなく違うものも絡むようになった。それが邪魔で仕方ない。支障をきたすと、そう言った。
契約で得たのは能力、ノイマンだ。代償に理性を失った。元々はオルクスの能力しかなかった。だからノイマンの能力を得て、さらに実験が進んだ。そして代償により実験以外何も考えなくなった。欲のままに果てまで求め続けた。もう私を紛らわす物はない。何一つとしてだ。
彼女がセルリーダーと契約をした。彼女はまた恍惚な表情を浮かべて実験していた。とても楽しそうだ。僕はそれで良かった。また一緒に実験する時には彼女の頭脳に驚いた。そこまでの判断と行動力と決断力、そして導き出される結果に僕まで心躍らせた。僕たちはまた一緒に実験を進めた。常にRB達の残骸が転がる研究室で。
僕は表に出ればRB達の脅威だろう。私は表に出れば人ですら手にかけて実験に使うだろう。そこから名付けられたのは『マスターサイエンティスト』。
またの名前を僕は『テルプ』。私は『ラネル』。
追記
マスターエージェントの称号がラネルだけの物になった。テルプはUGNに捕らわれた。
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