第4話 FHエージェント『イガミ』
『僕は死にたくない。俺は死んでもいい。戦いたくない。壊そうぜ。』
頭の中でずっと声がするんだ。ずっと僕と同じ声がね。
その声は一言でいうと戦闘狂だった。人が潰れる様子が楽しいんだって。僕はそんなこと思っちゃいない。むしろグロすぎて吐くよ。なのにもっと殺そうと壊そうと暴れようと体を乗っ取りに来るんだ。それがたまらなく僕には怖かった。
僕は喧嘩とか戦うことが凄く苦手だった。子供のころはよく父親に殴られて、母親になだめられるも病気で早死。父親だけになったときは絶えられなくって能力を初めて使ったんだ。初めて人を殺した。すごく吐き気がしてくらくらとめまいがして、気絶することだってあった。やっぱりさ、内臓が飛び出すのはすごいグロい。吐く。間違いなくゲロる。
その後、FHと絡んでいる裏社会に逃げた。戦うことはからっきしだったから貿易、つまりは運び屋として動いた。逆に戦闘以外は僕の得意分野だった。どんな大きなものでも僕には運べて、のちに高価で特別な物を運ぶ専用の運び屋になっていた。全国を、全世界をそれで回った。そんな中だよ。あの声が出てきたのは。
ある荷物を運んでいたらいきなり、黒い何かが厳重にベルトまでされている箱から出てきちゃんだ。僕はびっくりして腰抜かしてた。そしたら黒い何かが言ってきたんだ。お前でいいやって。そこから僕の両手の甲には2つの魔眼が常に出るようになってしまった。あ、僕はピュアバロールの能力者だよ。
それっきり僕は知らない場所で寝て居たり、目の前にとってもグロい死体が何体も転がってたりとすごい悩まされて、病んで、夜も寝れなくて、幻聴だと思った声は僕そっくりで、自殺にまで追い込まれちゃった。そこで初めて声があの時出て来た黒い何かだって分かったんだ。彼は同じ能力のRBだった。名前は無くって、とりあえず『ホムンクルス』って言ってた。
その後は死にたいとずっと思ってた。けども、死にたいと思っても死のうとはしなかった。僕は口だけの二重人格者だと思われた。死にたい死にたい思っても死ねない。死ぬまでが怖いんだ。どれだけ苦しいだろうかと考えたり、死んだらどうなってしまうだろうと心配したり、僕は臆病だった。
そんなある日、日本に来たんだ。そこでは顔を一切見せてくれないお得意さんがいた。その人はFHセルリーダー。彼が僕の気持ちを誰よりも理解してくれた。けども、どこか怖かった。無情と執着が染み出ているというか、優しいんだけど狂気も入っているというか、とにかく近寄るのが怖いセルリーダーだった。そんなセルリーダーは特別な力を持ってた。契約の力だ。僕は頼んだんだ。この僕を助けてくれって。そしたらセルリーダーは答えてくれた。ここで、本当は契約なんてものに頼らない方が良かったんだ。僕は契約の力を甘く見てた。
契約で得たのは僕の中にいるRBの行動制限とFHエージェントという名。代償は両目の失明と精神汚染。このおかげで僕は目が見えなくなった。僕がいつの間にかRBと入れ替わることもなかったし、貿易だけの運び屋よりももっと融通が利くようになったのは良かった。だが、この代償が何よりもきつかった。
僕はFHエージェントの名をもらったから、イリーガルではなくエージェントになった。そのセルに入り、専属の運び屋になった。ちょっと使い方荒いけど、それ以外は特に何も変わらなかった。いつも通り荷物を受け取って、言われた場所まで運ぶ。そしてセルの為に貿易をしたり、物流を良くした。セルリーダーは満足していた。僕はたまに聞こえてくる声に畏れてた。
僕にとってこれは苦なのか。それとも楽なのか分からないや。死にたがることは減ったけど、こうも精神がおかしくなると考えていることにすら疑いが出てきてね。どれが正しいのか分からなくなってくる。そんな僕に言うんだ。暴れたくなったらいつでも言えって。あの声が誘惑しているのか支えてくれているのかどっちにしろ、僕はできれば殺したくない。グロイから。 あぁ、でもいざグロくなっても目が見えないから大丈夫かも・・・。
僕は表に出ることは少ない。完全に裏で動いているから。俺は出てくることはほどんどない。だが、戦うときは喜んで出るぜ。そんなことから名付けられたのは『イガミ』。
またの名前を『隠運び』だよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます