第3話

「ほう、あおいさんはさすがだ。立派な毛並みじゃないか。」


 茶菓来先生が私を見て言った。この獣感は気にくわないが褒められて悪い気はしなかった。


「さよりさんも心配しなくていい。成長の遅い者は必ずいる。そういう者は大概が大器晩成型なんだ。」


 さよりが安心したのが分かった。


「今、君たちを呼んだのには訳があってね。あおいさんの毛並みを見てわかるとおもうが君は特別だ。既に1番神使に近い。」


 木雨先生が私を寝かせたのには訳がある。そう茶菓来先生は言った。


「ああ、木雨先生を悪く思うなよ。」


 茶菓来先生が言った。

 彼は猫憑きだ。それも猫又。神使候補ではなかったが、その彼が学園に来たのはとても優秀だったから。15歳にして生徒としてではなく教師として迎えられた。種は違えども彼は自分が人と違う、それがまだ15の子供の胸をどれだけ苦しめるかをよく知っている。


「そろそろコントロールトレーニングに合流してくるといい。今日コントロールできるようになる必要はない。卒業までにできれば上出来だ。」


 体育館に着いた時、みんなが一斉にこちらを向き、ザワザワと騒がしくなった。


「あれが噂の…。カッコいい…。」


 少し照れくさい。私とさよりはクラスに合流した。

 この耳と尻尾のコントロールはなかなかうまくいかない。動かそうと思っても動かず、自分の意識とは離れ勝手に動いているようで気持ち悪い。自分の体なのに不思議な感じだ。さよりの頭にあるのはただのカチューシャで、慣れる必要もなく隅の方で皆を見ている。皆は自分たちについているものに慣れようと必死でそんなさよりには気づいていなかった。


「今日はここまで。授業は行わないので夜まで自由に過ごしてください。」


 終了の合図が出された。慣れない耳と尻尾に未だ戸惑いつつ生徒たちはわいわいと体育館を出た。


「タピオカいこー!」


 なんとなくみんなと違うことに引け目を感じていたさよりがその重圧から解放されたように絡んできた。


「なんか、みんなが頑張ってるところについていけないのって、なんとなーく寂しいよねっ!」


 明るく振る舞うさよりもどこか寂しそうだ。今日はさよりに付き合ってあげようかな、そんな気持ちにさせられた私は、今日は遊ぶぞ!と意気込みさよりと街に出かけた。

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