第15話 採掘開始

トンネルを抜けるとそこは草原だった。


周りを絶壁に囲まれた場所。

盆地というか、窪地のような感じだ。

「その昔、この山では爆発があったらしいわぃ」

驚嘆の表情を浮かべるタタンの横でロダが言った。

普段、工房に引きこもって鍛冶業を営んでいるタタンにとって、初めてみる風景だったからだ。

よく見ると所々ところどころに丘があり、その場所には草が生えていなかった。

「ロダさん、あれは?」

「アレが目的の場所じゃ」


キラリ キラキラッ


まるで誘っているかのごとく、赤・青・白・黒の光が自分の瞳に差し込んだ。

『え?黒??』

目をぱちくりさせる。

「ロダさん、あの黒い光なんですか?普通、黒って光りませんよね??」

「あー…、タタン。まず、言っておこう。アレに触れるな。なるべくな」

他の色を打ち消してでも主張してくる黒い光。

妖艶に誘っているようにも見える。

ごくりとツバを飲み込んだ。

「はい…」


「わしとダノンで見張りをするから安心しろ!わっははは!」

「んだんだ」

「私はや~よ?日差し強いもの、ここ」

「了解した。はっははは!」

「では行くぞい、タタン」

「はい、ロダさん」

草の生えていないハゲた丘を目指して4人は進んだ。



「ロダさん、なんですかココ。うっ!」

ハゲた丘に近づくにつれ、焦げた臭いと汚物の臭いが混ざったものが漂ってきて、鼻腔を刺激した。

その山のあちこちから鉱石やら魔石が顔をのぞかせていた。

石以外にも白く枯れた植物らしき突起物がいろいろなところから生えている。

「すごい…いろんな意味で」



「今回はこの丘か。わしらは頂上と境界で監視するでな。わっははは!何かあればすぐ知らせる。その時は通路に逃げ込め。」

「んだ」

スラールとダノンが位置についた。

高い場所に陣取ったスラールが片手をあげて合図した。

ロダが気合を入れる。

「さぁ、始めるぞ」

タタンに視線を向けるとにやりと笑った。

麻袋とハンマーを両手に持ったロダがタタンに渡す。

タタンはアックスを背中に装着して、受け取った。

そして不思議な形状のものを渡された。

何かを挟む形状をしている。

麻袋を閉じるために使うものだろうとはさんでみた。

「ああ、違う違う」

ロダは手を横に振った。

鼻を指さした。

「ここだ」

鼻の頭をはさみ込み、臭いがしないようにしていた。

「気温が上がるほどに臭いがきつくなるからな。覚悟しとけよ」

気になってスラールとダノンの方を見たら、同じような器具で鼻を挟んでいた。

スラールと目が合うと、左手をぐっと前に出して親指を立ててにやりと歯を見せた。

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