第13話 草原での最終確認

うっそうと背の高さまで生えている草と林の中を進むパーティー。

ただしメンバーひとり脱落中。

マバディリーコを先頭にずんずんと進む。

相変わらず、草木は彼女をけるようにぐにゃりと曲がってそのまま後方へと去って行く。


ぱっと視界が開けた。

草原が山の頂上まで続いており、右から左に風が吹いている。

見渡すと一ヵ所から煙が立ち上がり、左に折れているのが見えた。

「誰かいる」

ロダがつぶやくと同時にダノンがマバディリーコの前に出た。

斧を前にかざし、体勢を整える。

ダノンを先頭にロダ、タタン、マバディリーコは後衛に下がった。

「目的地は煙の方向。すすむしかないようじゃな」

「んだ」

「ちょっと、リコさん。後ろから抱きつかないで。服の中に手を突っ込まないでぇ!」

「んっふふ。だぁ~め。ちりょうしておかないとぉ~」

何かぬるぬるする液体で乳首を塗りたくられるタタン。

周辺をくるくるなぞったり、乳首を指先ではじいたり。

にやにやしながらまさぐるマバディリーコ。

「ぺたリコー!皆が緊張しとるときになにやっとんじゃー!」

「あらぁん。だって、ね?あれ、彼だし」

「んぁ?」

タタンの右肩ごしに顔を近づけている彼女はあさっての方向に視線を向けた。

ロダが怒りの視線を向けたからだ。


「メシくっとるな」

たき火の前にどっかと座っている男は何かをムシャムシャと咀嚼そしゃくしているのがわかった。

防御態勢をとっていたダノンは緊張を解いた。

マバディリーコがすっくと立ち上がると、黒い三角帽子を視認できたスラールが声を上げた。

「おーい。こっちじゃー」

さそわれるままに皆は足を進めた。




「なんじゃい、えらく遅かったのぉ。あまりにも時間がかかりすぎるから軽く寝たあとメシにしておったところじゃ」

にやりと笑うスラール。

たき火を中心に円を囲むように座る。

「わしらも食べておくかな」

「んだ」

「ところでロダさん、ここはどこですか?」

タタンがぐるりと見渡した。

山と深い草の林との間にある少し傾斜はあるがなだらかな狭い空間が続いている。そこでたき火をし、食事をしていたのだ。

すぐ横からは傾斜が急な山になっている。

「この山の向こうが鉱石の採取地だ」

山を見上げるととても登るだけでも1日以上かかりそうな感じである。

思わず、ツバを飲み込んだ。

「え、これ、いまから?いやいや無理です。こんなの」

青ざめるタタンの背中をロダが叩いた。

バシン

「なに言ってる」

「わっはははは!ワシは過去に登ったことあるが、頂上からあちら側は絶壁じゃぞ。絶対に下りられん」

「んだんだ」

「え…、じゃあマバディリーコさんがまた魔法で?」

「山なんて避けてくれないわよ?」

ちらとロダを見る。

「タタンよ。洞窟を通る」

「洞窟」

「先代か、先々代かわからぬが、トンネルがある。そこを通るんじゃ」

スラールは左手人差し指で目的場所を指した。

「もうすこし先に狭い入口がある。中は広いし、魔物も滅多にいない。が、注意は必要じゃ。…それと」

すっくと立ち上がるスラール。

「今日は日が悪い!先ほど一匹の龍と目が合っちまった」

スパーン!!

どこからともなく出したハリセンでスラールの頭を叩いたロダ。

「アホかー!馬鹿か!阿呆か!いや馬鹿なんだな!?!?」

「たき火して煙をたなびかせてよく生きてるな!?」

「狙ってくださいと言ってるようなもんじゃないか!」

大声で一気に叫んだので、はあはあと肩で息をするロダ。

「わっはははは!なんもしてこんということは、問題なかろうて」

「んだんだ」

「やってくれるわねぇ~…スーさぁん。ローさぁん、銀貨5枚分レイズよ?でないとここから先はついていかないわ」

「ここでじっとわしらが戻るのを待つつもりか?」

「んふふ、どうかしら~」

「3枚。それでどうか!」



「ん~…いいわよぉ。交渉成立~」

しばらく考えていたマバディリーコはOKを出した。

「おぃ。スラール!キサマへの報酬から銀貨3枚さっぴいとくからな!」

「わっはは…なにぃ!?」

「とにかく今日は上空の風が強くてよかった。煙が山の上を越えなかったからな…。」


じゃっ。じゅうううううっ。

水をかけて火を消した。


それぞれが準備を開始する。


「いいか、洞窟抜ける前に偵察を出す。ダノンたのむ」

「フンス」

「タタンは洞窟の中から飛び出すなよ?何が見えても」

「?…はい」


「では、行くか!」

洞窟入口に向かって歩き始めた。










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