第12話 名の由来
輪の中にいると紐から発している、ほのかな光で包まれているために恐怖というものはあまり感じられない。
むしろ昔遊んだ『いもむしごっこ』を思い出しては照れるやら恥ずかしいやら楽しいやら。感情が顔に浮き出ていた。
※ いもむしごっことは: 一本のヒモを使う。大きな輪っかにして3~6人が中に入ってヒモを持つ。先頭がかがめば2番目、3番目とかがみながら歩く。電車ごっこの昆虫版。
「ぺたリコよ、いつもながら思うことがあるのじゃが」
「なによ」
「この羞恥プレイ、どうにかならんかの」
「んだ、んだ」
ぴたりと止まり、少し首を横に向けるマバディリーコ。頬は少し見える程度に。
「スラールの後を追ってもいいのよ?」
一瞬固まる二人。
タタンは『?』という顔のまま止まった。
「ああ、わかった、わかった。さっさと進んでくれ」
ロダはアゴを二度前に突き出すように動かした。手を離してジェスチャー出来ないからだ。
「たーくんもこういうのはキライ?」
いきなり質問がとんできたので返事にとまどうタタン。
「え、あ、いえ、キライとかではなく、話にきいたことある遊びが今体験できているのかと思うと嬉しいですね」
ピクンと反応したマバディリーコは両手を頬にそえながら、くるりと振り返ってタタンを見る。
「いいわぁ~、その反応」
がくん
何か床が抜けた感覚に全員が陥った。
事実、落下している。
「ぺたリコー!!」
ロダが叫んだ。
しっかり握るヒモがたよりなく、ぐにゃぐにゃと波打つ。
「きゃは★」
「きゃはじゃねぇぇぇぇ!」
「んだーーー!」
「うわああああああああああ!!」
「いいかげんにしろーーー!こ…この…」
「変態魔法使い つるぺたマバディリーコおおおぅ」
びたあっ
全員の動きが止まる。
ロダは真っ青になった。
冷や汗が止まらない。
ロダの正面にいるマバディリーコの目から真紅の光が発せられ、口から蒸気のようなものが立ち上がっているのがタタンから見えた。
『あ、まずい』
ロダは顔を上げることなく、ぶるぶると震えながらマバディリーコの足下を凝視し、硬直した。
「いま何て言ったの?ロダちゃん?」
顔を流れる汗が闇の中に落ちていった。
沈黙が続く。
「あの、天才魔法使い すまいるマバディリーコさん?私、急いでいるのでいいですか?」
ああん?といった顔をしていたが、タタンが発言者だとわかるとしゅるしゅると普通の顔に戻った。
「そうね、たーくん」
視線はタタンに向けたまま、ロダにのすねに一発ケリを入れた。
「~~~~~~」
くるりと反転したマバディリーコ。
「さぁ、再度出発するわよ~と言いたいところだけど、もう出口だわ~」
正面に草に埋もれた楕円のようなものがあり、葉と葉のスキマから光が差し込んできていた。ロープに囲まれた集団はマバディリーコを先頭にその中に進んでいく。草は渦のようにゆっくり回転しながら広がってゆき、中心の明るい場所が広がってゆく。
ふわっ
地に足がついた。
草と木々が茂る場所に出ることが出来た。
「ほっ」
ロダが安堵する。
ヒモをしるしゅると収納したマバディリーコはぼそりと言った。
「今度、なにかおごってもらえる か し ら ?」
耳元でささやかれたロダはこくこくと頷いた。
「たーくぅん。こわくなかったぁ~?」
抱きつかれたタタンは顔を赤くしながら思った。
『なるほど…つるぺた…』
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