第9話 おきがえ
青々と茂った草原。
心地よい風と朝日。
遠くからこちらを伺うために両足立ちをして耳をピンとし見ている小動物たち。
「うまそうじゃが…、今回は見逃してやるわい」
「今日は気分がええの~」
「わはははは」
「」
似つかわしくない恰好をした3人とタタン。
合計4人パーティ。
時々、下手くそな口笛のメロディーがタタンの心をきゅっと締め付けた。
『だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょうぶ』
くりかえすように自分におまじないをかけるがごとくぶつぶつと繰り返していた。
ロダは後方のタタンを見て言った。
「似合っているじゃないか、タタン。ボンビールを思い出すぜ」
「おおワシもそう思っておった」
「変な服でなくてよかったな!わはははは!」
「ま…まぁ…」
タタンは数時間前の出来事を思い出して、両腕をかるく組んで青ざめた顔をした。
ぶるり
服装の件である。
ボンビールとトーリンが準備してくれた冒険服を2Fの住居で着替えたタタンが階段を下りてきた。
そこには少年少女の姿でボンビールとトーリンが立っていた。
一瞬の沈黙。
「あはははは!!」
「に、にあってるわよ(ぶるぶる)…タタン…ぶふっ」
そこには革製のスポーツブラと海水パンツにアームカバーとブーツと小さい角がついたヘルメットをつけた、全身毛だらけの男がマントを羽織って立っていた。
「怪しい、あやしすぎるわぁはははは」
「し、ししょお~…」
全体をしろしろと眺めるトーリン。
「あらあら、どこからがアンダーヘアーなのかしら」
おもわずパッとマントで前を隠した。
「おかしいなぁ。ワシが着ていたときは違和感なかったと思ったのだがな」
「何言ってるのよ、あなたが隠し芸をするからって一回着ただけじゃないの」
「そうだったかの。まぁ、楽しいものが見られたと言うことでヨシとしよう」
えっ?!という顔をするタタン。
「師匠!いやですよ、この恰好で行くのなんて!着替えてきます!」
2Fに向かおうとした。
「まてタタン」
階段を上る足が止まる。
「その下着は絶対につけてゆけ!」
真っ赤になるタタン。
「これ、下着だったんですか!!!」
ドタドタドタと駆け上がって、ドアをバタンと閉めた。
「さて、トーリン」
「なに?」
「これを渡してやってくれないか?」
渡された服をじっと見つめるトーリン。
そっと顔を服にうずめて息をした。
「あなたの香りがする…うっすらとだけど」
ニヤリと微笑むボンビール。
タタンの部屋のドアの前に立つ少女のトーリン。
「タタン、さっきは笑ってごめんなさい。立派なモノが見えたからつい…いえ、そうじゃないわ」
ふるふると顔を横に振った。
「これを着なさい。ボンビールから渡してと」
ドアがゆっくりギィィと空いた。
「これは?」
「あのひとが冒険者だったころに着ていたものを直したものよ」
「師匠の…」
「お守りだと思って着ていきなさいね」
こくりとうなづきドアを閉めた。
ふぅーと息を吐いたタタンは前を向いた。
草原はすでに越えて森の中に入ったのである。
すこしずつ傾斜がきつくなり、山に向かっていることは確実だった。
「皮と乳首がすれて痛いな」
胸に手を当てつつ、ぽつりとつぶやいた。
『計画通り!!』
どこからともなくそんな声が聞こえた気がした。
「!?!?師匠?!?!」
『なにかに私をハメようとしてませんか?師匠は』
キョロキョロと目だけ動かしたが、何か怪しいものは見当たらなかった。
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