落下物は輝く

第8話 鉱石店のロダ

おやじ!おやじ!

おお、むすこよ。どうした。

おやじ、ついに とうたつしたぜ、おやじよぉ!

ほほう、やりおったな。して、せいかは?

ほら、みてくれ。でんせつと うたわれた 『ぼーぐれたっつぁ』こうせきだ。

これをつかえば すごいものが でき る ぜ お や じ …

どうした、むすこよ。どこへいく。まて そちらに いっては だめ だ  



「……!……!…っさん!おやっさん!ロダのおやっさん!」

「ん…ガハッ。んごっ。じゅるるっ」

カウンターのすぐ後ろで寝ていた店主をゆさぶり起こした。

「おお…タタンじゃないか。めずらしいな。いつものお前らしくない」

ふあああ…とあくびをしながら起き出して、腕を上げて背伸びする。

せなかや胸の辺りをぼりぼりとかいている男の名はロダ。鉱石店の店主。


「起こして悪いと思ってるけど、急ぎなんだ。」

タタンはロダの両肩をがっしりつかんで言った。

「ミスリル鉱石と魔鉱石と水晶をたのみたい!」

急に何言ってんだという寝ぼけ眼でタタンを見上げていたが、その瞳の奥に燃える炎を見たロダ。

がっしりとつかまれている両手がかすかに震えつつも、熱い。


こりゃ、なにかあったな?


鍛冶屋トールとは長い付き合いの鉱石店。

ピンとくるものがあった。

『ボンビールめ』

ちらと考えたが、すぐ止めた。

鍛冶屋には鍛冶屋のやり方があり、それについて口を出すのは御法度なのだ。


「で、何がほしいって?タタン」

「今言った通り、ミスリル鉱石と魔鉱石と水晶がほしい!すぐに!」

ロダの肩をゆすりつつ言った。


「まず落ち着け、タタン」


はっと我に返ったタタンは両手をロダから離した。

「すいません、ロダさん」

「寝起きで頭が回らん、いっぷくさせろや」

葉巻と涙型のごつごつした鉱石を取り出した。

底は白く乳白色。頭頂部は真っ赤できれいなグラデーション鉱石だ。

ロダは葉巻をくわえて、真っ赤な部分に押し当てた。

すると葉巻に火がつき、数回スパスパと吸い込んでは煙を出した。


ぷふあぁ~~~


タタンは落ち着きを取り戻してきたのを確認できたロダは口をひらいた。

「ミスリル鉱石は品薄だ。魔鉱石は品切れ。水晶はある」

ロダはタタンを見据える。

「どんなモノを作るつもりだ?タタン。それによって量が変わることは知ってるよな?」

こくりとうなずく。

「…っあ、あの」

言葉が出にくい。

「しょ、少年が使えるツーハンドアックスをつくりたいのです!軽くて丈夫。曲がらない。そしてしなやか」

「おいおい、矛盾したモノつくろうとしてないか?」

「でも、考え抜いた結論がこれなのです!」

真剣なタタンにロダは葉巻を足に落とした。


あつっ


ロダは火のついた葉巻を地面で消した。

椅子に座ってるロダはひざに肘をついて右手にアゴを乗せた。

少し考えた後にロダは提案した。

「明日の朝から鉱石採取クエストをギルドに発注してある。お前も来い!」

「え?私がですか??いやいやいやいや、ムリです、無理に決まってますって。何言ってんですかロダさん」

後ずさるタタン。

じろりとにらむロダ。

「お前が現地で鉱石の目利きをするんだよ。鉱石にも当たりハズレがある。ワシがハズレの鉱石持って帰ったら、それで作るのか?それで納得できるのか?出来が悪い斧だったらワシのせいにするのか?責任とれとか、いやじゃぞ?」

両手の手のひらを上にあげて肩をすくめた。


ごくりとつばを飲み込む音が聞こえたような気がした。


「やります」


肝が据わったようだな、そうみたロダは椅子から立ち上がった。

「ギルドにはワシが報告しておく。あと戦いの準備をしておけ。」

「鉱石採取ですよね?」

「そうじゃ」

「鍬と麻袋とハンマーでよいのでは?」

あえてそれについて返事をしないロダ。

「ボンビールとトーリンに準備を手伝ってもらえ。決して一人で装備をきめてはならん。」

「はあ、そうですか」

頭上の『?』が消えないタタン。

ロダはタタンに近づくと、背中に紅葉形ができるほど思いっきり背中を叩いた。


「明日の朝、日の出と共に出発じゃ!」

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