第7話 最後の信念
「うむ」
少年の姿であるボンビールは口角を上げた。
「タタン、お前に最終試験を執り行うことにする!」
ビシッと右手でタタンの顔面を指さした。
「はぁ、…え?ええっ!?」
いきなりなにいってんですかお師匠様、私はまだまだですよ?
目を白黒させながらしどろもどろでなんとかこの話をないものにしようとするタタン。
「もう決めた事じゃ、観念せい!」
「はぁ~」
こうなるともうどうしようもないことを知っているタタンはうな垂れた。
柳の枝のようにゆらゆら動いて、どうしようどうしようとブツブツとつぶやいている。
「そこでじゃ!」
少年姿のボンビールは鼻息を荒くした。
「ワシの体に合うサイズの斧を作れ!もちろん、ツーハンド・アックスな!」
「ししょーおおぉ…」
「期限は1週間でな!」
「師匠?!ちょ、ちょちょちょ、ま・て・よ。まってくださいよ!」
「vs.炎、雷の耐性付きがええのぉ」
「はぁ?!それって、あれに匹敵するアックスじゃないですか!」
タタンは壁に掛かってある古びたツーハンド・アックスを指差した。
それは若かりしころのボンビールが冒険で使用していたものである。
少々ホコリが被っているものの、刃の部分が鈍く光り、存在感というかオーラを時々放っていた。
「そっくりの性能のものを作れとは言わん。お前の現在の実力を知りたいのじゃ」
「そうは言われましても…」
少年ボンビールから壁に飾られてあるアックスに視線を向けた。
足が震える。
手に力が入らない。
おぼつかない足取りで、そのアックスの前に立った。
視点が定まらないタタン。
「タタン!やるか!やらぬか!」
腕組みした少年ボンビールがタタンの後ろから叫んだ。
びくう!
タタンは姿勢を正した。
カタタタタタタ
正面から振動している音が聞こえる。
はっとなったタタンはアックスからの強烈なオーラがぶちあたってきているのに気がついた。
ぶわああっっ
さらなるオーラをアックスが発してきた為、圧倒されたタタンは思わずのけぞった。
何度も見たりさわったり観察したりしてきたはずのソレが生きているかのごとく反応し始めた。
タタンの感情はオーラに当てられて渦巻いている。
驚異
恐怖
畏怖
落胆
羨望
渇望
欲求
『我を取るか?キサマにその資格ありや?』
タタンにはそう聞こえた。
はっ
気づいたときはタタンの右手にそれがしっかりと握られていた。
少年ボンビールは目をつぶり、大きく息を吐いた。
斜め後ろにいた少女姿のトーリンは涙をぽろぽろとこぼしていた。
「お師匠様」
振り向き、少年ボンビールの前に跪いた。
「やります」
「うむ」
後にタタンはその時のお師匠様が寂しそうな嬉しそうな泣きそうな顔をしていたことを思い出すことになる。
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