第3話 助けてくれた君たちへ
ぱちくり目を見開く少年ドワーフは周辺を見渡した。
石造りの壁、木製ベッド、木製のドア。
少年の周りには子供が二人きゃあきゃあ騒ぎながら漫才のようなことをしていた。
少年「ここは…?」
男の子「わしの家じゃい」
女の子「わたしたちの家でしょ」
男の子と女の子が部屋の窓を開けようとしているが届かない。
男の子「あ、あれっ?」
昨日までなんなく開閉できた窓がとても高く感じる。
男の子「ばーさんや、この家こんなにおおきかったかのぅ」
女の子「おじーさん、ボケるにゃまだ早いでしょ…あら、届かないわねぇ」
男の子「わしゃまだボケとらん…わ…お前は誰じゃ」
女の子「やっぱボケてきてんじゃないのじーさ…ん…?」
しばらくお互いを見つめ合った状態で固まってしまった。
少年「キミたち二人で住んでいるの?おとうさんやおかあさんは?」
その空気を壊したのは少年である。
同時に部屋に大声が響き渡った。
ええええええぇーーー!?
ほわわわわわぁーーー!!
男の子「ばーさん!ばーさん!若い頃のトーリン!!うほぉっ!」
女の子「じーさん!じーさん!…ぴきっ」
女の子がいきなり男の子を殴った。
女の子「あのころはよくもいじめてくれたわねぇ、ボンビール!」
男の子に馬乗りになって顔を殴り始めた。
男の子「す、すまん。ぶへっ。あ、あのころばぁっ。す、好きな子におごっ。きづいでへつ。ほじぐでぇっ。」
鬼の形相から福の面相へ変化してゆく女の子。
「はぁ~~~っ、きもちいい…」
ベッドから起き上がった少年が馬乗りになってる女の子を持ち上げた。
少年は状況を理解できぬまま混乱している。
『なにこれ』
ハッとわれに返った女の子が暴れ出した。
女の子「ちょっと、離しなさいよ!まだ殴り足りないんだから!」
じたばたする女の子を見上げた男の子は足で床を蹴ってずりずりとその場から移動した。頭が壁にゴツンと当たると我に返ったように目を見開き立ち上がった。
男の子「トーリン、いいかげんにしろ!!」
その言葉は圧力を生み、空気を押して部屋中に広がって消えた。
男の子の正面にいた女の子と少年は風圧を感じた。
女の子のスカートは広がり、カーテンは左右にバタバタと揺れ、窓はガタガタと振動した。
静寂
女の子がバタつくので少年が床に下ろした。
男の子の前に女の子が立つ。
女の子「ボンビール!すごい、すごいわ!若い頃のあなたが戻ってきたみたい!」
ぼんやり立つ男の子をハグしてぴょんぴょんした。
男の子「わしから出たのか…」
その場にゆっくりとしゃがみ込む二人。
しばらくたって、少年がベッドに座って頭をかかえた。
少年「ごめんなさい、こんなことになるなんて」
男の子「あんた何モンなんじゃ?」
部屋の壁際で抱き合う二人の視線がゆっくりと頭をあげた少年の視線と合った。
少年「私の名はエンジェ…いや、………」
少し考えているようだ。
少年「…ウァルト。ウァルトと申します」
少年らしからぬ雰囲気がすこし漏れ出たのを二人はなんとなく感じ取った。
少年「とある場所から逃げてきました。申し上げることはできませんが。」
一度、目をそらして床を見る。
大きく息を吐いたのち、つづけた。
少年「そして、私の力があなた方に影響してしまったようです。一般の方ならそれほど影響はないハズなんですが、もしかして過去に名を馳せたお方ではないでしょうか?たとえば、英雄・勇者・仙人とか」
少年の目の奥が漆黒の闇のように見えた二人はビクッとした。
しかしすぐ男の子は立ち上がり、女の子の前に立ちはだかった。
冷や汗が男の子の背中を流れ落ちる。
男の子「昔の話じゃ!今は違う!」
ふぅーーーっと息をついた少年。
少年「じゃ、だいじょうぶですね!!」
『はあ???』
開いた口が塞がらない男の子。
目をまるく見開いている女の子。
少年「人生経験豊富そうですし、問題ないでしょう!」
二人に近づいて、二人の肩を抱いた。
少年「いやぁー、一般の方なら成人するまで面倒見なくちゃいけないかな?なんて考えていたんですよ。でもあなた方は違った。もしかしたら×××××(聞き取れない言語)と対峙したことがあるかもしれない。あ、詮索はしませんよ?そんな方なら余裕で生きられるでしょう?なので、第二の人生を謳歌しちゃってください!!」
すっくと立ち上がった少年は部屋のドアを開けスキップで出て行った。
玄関のドアを閉める際には一言つぶやいて。
少年「ではまたいつか…」
パタン。
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