第13話 終わりのない作業

 グランに秘密を打ち明けた後も特に何か言ってくる事もなく、二人の関係に変化はなかった。

 そんな平穏な日々が暫く続いていたが、再びノアの名前で指名依頼が入った。

 ユーリが城にある研究室に行くと、部屋にはクレインとノアの他に40代くらいの職人風の男がいた。

 男の名前はローガンでこの国で星3の装備品を作ることができる3人の内の1人だった。


「ふたりにはクズ石の加工をしてもらう」


 クレインの言葉に指名依頼での作業の日々を思いだし、顔をしかめた。あれは辛かった、正直もうやりたくない‥‥‥感情が素直に顔に出てしまう。

 どうにか断れないかと思案していると、クレインから「ああ、もちろん拒否権はないから」と笑顔で言われ、彼の笑顔は笑っていても目が笑ってないから本当に恐い。


「あれからローガンもクズ石の加工を出来ることが分かってね‥‥‥ふたりと他の者との違いは何だろうね?」


 全てを見透かすようなクレインの瞳に思わず後退さりそうになる。




「はあ‥‥‥」


 ため息をついて横を向けば、ローガンが黙々と作業をしているのが目にはいった。ユーリとローガンは、かれこれ2週間くらい一緒に作業している。

 話をするでもなく黙々と作業に没頭するだけの日々が続き、ユーリは疲労とストレスで鬱々としていた。同じように作業に従事しているローガンも頬がこけて疲労が溜まっているようだ。


 クレインは、人使い荒すぎなんだよ


 内心愚痴を溢していると、呼びに来た兵士によってユーリとローガンは裏庭へと連れてこられた。そこにはクレインやノアの他に役人や職人が何人もいて、井戸にある蛇口の付いた壺のようなものを囲んでいた。

 ユーリは初めて見る奇妙な形に目が離せなくなり、遠くからじぃ~っと見ていた。


「そろったようだね、始めようか」


 クレインの言葉を合図に、役人が壺の様な物の上部の突起部分に触れる。すると蛇口から勢い良く水が出てきて、手を離すと蛇口から水がでなくなり、触れると再び蛇口から水がでる。それを何度か繰り返した時には「わあぁぁぁ 成功だ!」という歓声で裏庭は盛り上がっていた。


 水汲みと言えば井戸から釣瓶つるべで汲む他なく重労働だ。それが手を触れるだけでいいなんてこんな便利なことはない。


 この場にいる全員が手を触れて水をだし、その便利さに暫く興奮が収まらなかった。

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