第14話 楽しい酒

 本当に凄かった。手を触れただけで水が出るなんて、これほど衝撃的なことは今まで一度もなかった。ユーリはその感動を伝えたくて、作業から解放されるとグランと一緒に酒場にきて、如何にクレインの研究が素晴らしくてクズ石に価値があるのかという話をしていた。


 「僕たちの加工したクズ石を使った井戸から、手を触れただけで水がでたんだよ。凄いよね! 暫く興奮が冷めなかったよ」


 ユーリは身振り手振りを交えて、いつもよりも大きな声でグラン相手に一方的に喋っていた。


「‥‥‥‥きいてる?」

「ああ、きいてる」


 時々相槌を打ちながら聞いてくれたグランのおかげで、楽しい酒を飲めたユーリは珍しく酔っぱらい、グランに宿まで送ってもらった。


 次の日の朝、目が覚めると頭がズキズキと痛む。


「うぅ‥‥‥‥飲みすぎた」


 あんなに飲んだのは久し振りで楽しかったが、この頭痛は我慢できない。宿の女将さんに薬を分けて貰おうとベッドから抜け出し、一階へ降りていくと女将さんが受付をしていた。


「二日酔いかい?」


 ユーリを見るなり女将さんに言われ、お見通しだな~と苦笑する。


「昨日はご機嫌だったね。グランにお礼いっときなよ」

「うん」


 薬を貰って部屋に戻ってベッドに潜りこむとそのまま寝てしまった。


 目が覚めると頭痛はすっかり治まっていた。ん~っと伸びをしてから窓の外をみると綺麗な夕焼け空が目にはいる。


 よく寝たなとゴソゴソとベッドから抜け出し、何か食べに行くかと身支度をする。宿を出るところで「でかけるのかい?」と女将さんに声をかけられ「飯たべてくる」と手をふり宿をあとにした。


 大通りから裏通りに入ると行き交う人波がガクッと減り、少し通路を奥に進むと壁にもたれる人影があった。気にせず横をすり抜けようとしたが、横から腕が伸びてきたと思った瞬間、首に激痛がはしり視界が暗転した。


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