第10話 指名依頼

「はぁ‥‥‥飲みすぎた‥‥‥」


 昨日は借金を返し終わったので浮かれていた。ひとりで祝い酒を飲んでいたら、偶々きたグランも加わり盛り上がって飲みすぎた。


 昨晩は楽しかった、あんなに騒いだのも久しぶりだな


 ベッドのなかで昨日のことを思い出して顔がほころぶ。そして、そろそろ起きるかと伸びをする。

 ベッドから起き出し身支度を整えると、宿の食堂で朝食を食べてギルドへむかった。


 ギルドに入ると受付の職員に呼ばれ、何かしたかなと首を捻りつつ受付へ行くと、職員から指名依頼があると言われて紙を渡された。

 依頼者のノアという名前を見ても心当たりがないので職員に相談すると、会ってから依頼を受けるか決めても良いとの助言をもらい従うことにした。

 受付で依頼者に連絡をとってもらい、ギルドで2日後に依頼者と会うことになった。




 2日後、ギルドの窓口で声を掛けると2階の応接室に通された。

 暫くすると扉がノックされ、職員に案内されて二人の男が部屋に入ってくる。

 一人は市場で装飾品を買い占めていった青年で、もう一人は初めて見る。青年は以前と同様に見るからに上流階級の人間で、もう一人も上等な衣服に帯剣をしていて、どちらも二十代後半といったところだろうか。


 指名依頼をされるような心当たりもない。ましてや市場で一度会っただけでお互い名前も知らない筈なのに、この状況に不穏なものを感じて冷や汗がでてきた。


 2人がソファに座り職員が出ていくと、見知った方の青年がクレインだと名乗り、もう一人をノアだと紹介する。

 どうやら表向きの依頼者はノアになっているが、本当の依頼者はクレインのようだ。


 話を聞いていくと、どうやら僕は失敗していたようだ。クズ石が何故クズ石と呼ばれるのかを分かっていなかった。仮にも宝石である。いくら出来損ないと言っても見向きもされず放置されるには理由があったのだ。


「‥‥‥と言うわけで、あなたには依頼を受けてもらいます、もちろん拒否はさせません」


 そう言ったクレインの顔は笑ってはいたが、目は笑っていなっかった。そしてクレインを目の前に、逃げられない状況を察して僕の顔はひきつっていた。


 指名依頼の紙を手にした時に、会わずに断っておくべきだったのだ。今さら僕が依頼を拒否出来る分けもなく、当然のごとく依頼を引き受けることになってしまった。


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