第8話 銀の指輪

 シャフランで職人だったと知られたこともあり、頼みを引き受けることにした。ギルドにはグランから僕への指名依頼とされた。


 この国では結婚するとき夫婦でピアスを贈り合い、父から娘へ小指にはめる指輪を贈る習慣がある。

 早くに父が亡くなり、グランは年の離れた妹の親代わりだった。


「こいつが妹のレイラだ」

「レイラです、よろしくお願いします」

「ユーリです‥‥‥‥まずは型をとらせて」

「はい」


 レイラはツインテールに幼さの残る可愛い女性で、ユーリは今まで女性とあまり話すことがなかったこともあり、レイラを前に緊張して挨拶もそこそこに仕事にかかる。差し出された指は華奢で、小柄なレイラらしい綺麗な手だ。


 グランの話では、レイラは隣街に引っ越した幼馴染みとの結婚が決まり、お祝いの指輪をどうしようかと考えていた時にユーリと出会ったらしい。


「はい、おしまい‥‥‥こんな指輪がいいなぁ、とかある?」

「兄の持ってる銀のペンダントとお揃いにしたいです。あのペンダント、私も好きなんです」


 自分の作ったペンダントとを褒められて思わず笑顔になる。


「!‥‥‥うん、わかった」


 レイラも兄が持っている銀のペンダントを気に入っていた。そのペンダントを作った職人に指輪を作ってもらえると聞いて、実は朝から興奮していた。

 グランはそんな妹の様子に嬉しそうだ。


「なんだ、俺とお揃いにしたいのか!」

「そうよ、お揃いにしたいわ‥‥‥‥滅多に会えなくなるんだもの」

「‥‥‥‥そうか」


 ユーリは仲の良い二人の様子をみて、レイラに最高の指輪を作ろうと思った。





 店で働いていた時と違って道具が足りず細かい作業は難しかったが、漸く納得する物ができた。

 銀の葉っぱの蔦に小さな宝石が散らばった指輪で、レイラの希望通りグランの持っているペンダントとお揃いで、良いできだと自分でも納得するものが出来た。


 朝早くから指輪を見せるためにグランのいる宿を訪ねる。宿屋の主人に呼んでもらう間食堂で待たせてもらうと、早朝だというのに直ぐに身支度の整った姿で階段から降りてきた。

 グランに指輪を渡す。


「どう?」

「良い! ‥‥‥思ってた以上だ!!」


 グランはそれだけ言うと、指輪を食い入るように見つめている。

 そして朝食後に最後の確認のため、ふたりでレイラのもとを訪ねることになった。


「指輪できたからつけてみて」

「はい、うわぁ~! すごく綺麗!!」


 思わず感嘆の声をあげたレイラに指輪を嵌めてもらう。


「問題なさそうだな」

「ええ、ぴったりよ! 凄いわ!」


 最後の確認を終えたので指輪をグランへ納品して、ギルドへ完了報告を済ます。そして中心街にある役所へ行って、朝市への参加許可を取ってから宿へ帰った。




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