第7話 銀のペンダント

「焼鳥定食ちょ~だい」

「俺はエールと焼鳥」


 お腹も空いたし何か食うかということになり、ギルドに併設されている酒場へやってきた。お互い好きなものを注文し黙々と食べ始め、ほぼ食べ終わったところでグランが話をきりだした。


「指輪を作ってくれないか?」

「‥‥‥?‥‥‥なんで僕に?」

「お前‥‥‥本当は職人だろう」


 そう言うと僕の手首を掴み、手のひらを撫でてきた。


「冒険者の手じゃない、どうみても職人の手だ」

「‥‥‥今は冒険者だよ」

「それに、これはお前が作ったんだろう?」


 胸元からペンダントを取りだしてみせてくる。銀の葉っぱの蔦が絡んだ藍色の宝石のペンダントトップと銀のチェーン、確かに僕が作ったものだった。


「‥‥‥」

「お前だろう? これを作ったの」

「‥‥‥」

「シャフランに行ったことがある。これもその時に買った」

「‥‥‥」

「お前が作ったと知ったのも、その時だ」

「え‥‥‥!?」




 俺は1年程前に商隊の護衛でシャフラン国に行った。そこで目についた店に入り『なんだ、装飾品か』と興味を失い出ようとしたところ、銀色のペンダントに目が釘付けになった。いわゆる一目惚れというやつで装飾品に心惹かれたのは初めてだった。

 店主にペンダントをケースから出してもらい、手に取り食い入るように見ていると『それ、良いでしょ、僕の自信作なんだ』と少年が立っていた。





 物思いにふける彼に声をかける。


「グラン?」

「‥‥‥‥ああ、すまない‥‥‥‥当時のことを思い出していた」


 どうやら僕と出会った時のことを思い出していたらしい。残念ながら僕にはその時の記憶はないんだけど。


「シャフランはお前の故郷か?」

「‥‥‥ああ‥‥‥そうだよ」

「職人じゃなくて‥‥‥冒険者‥‥‥か」


 そう言うと、グランは何か考えているようだった。


「‥‥‥」

「ユーリ‥‥‥‥それなら冒険者として、俺の依頼を受けてくれないか」 

「‥‥‥」


 冒険者には秘密を抱える者もいる。詮索はしないから、依頼として考えてみてくれ、と言われてその日は別れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る