第132話ーーこのオーラは!?
魔力を感じる修行は苦痛でしかない。
いや、坐禅してばっかりだから楽って言えば楽なんだけどね。ただ体内の魔力を感じろとかってアバウトな言い方されても、全く何をどうしたらいいのかわからないんだよね。
「どうじゃ、何か掴めたかの?」
「いえ……全くもってどうしたらいいかさえ」
ここは1つ「バッチリですよ」なんて言いたいところだったけど、成果を求められても困るし、それどころか「じゃあかめは〇波を出そうかの」とか言い出しそうだから素直に告白しました。
「ふむ……ではそうじゃのう、よしわかった。そこに立ってみよ」
「はい」
素直に立ったら爺さんは俺から離れるように後ずさり20mほどの所まで行くと、突然足を前後に開き半身になると少し腰を落とし……両手で何かを掴むような仕草をしつつ腰のあたりに構えた。
ちょっ!
ちょっと待って!?
それって、アレですよね?先程から口にしているあのアニメヒーローの技ですよね??
「や〜ぎゅ〜う〜ほう!!」
あっ、そこはかめは〇波じゃないんだ?
一応名前に変更しているんだ!?
めちゃくちゃ語呂悪いけど……
ってそうじゃない、もんだいはそこじゃなかった!!
目には見えないけれど、気配察知には確かにバスケットボール大の塊がこちらにすごい勢いで飛んできてるんですけど!?
直後、俺は咄嗟に前に構えた腕に衝撃を感じながら後方へと吹っ飛ばされた……
完全に腕を折れてるよ……痛い。
「少し力を込めすぎたの……まぁわかったかの?今のが魔力そのものの塊じゃ。今のを体内に感じてみよ」
「えっ?」
「なんじゃその顔は……わからんかったのかの?ではもう一度……や〜ぎゅ〜う〜ほう!!」
ぎゃああああああっ!
やっぱり鬼だよ!!
俺が戸惑ったのは、ぶつけるとかじゃなくて身体に手を当てて流すとか出来なかったのか?って疑問に思っただけなのに、まさか再度ぶっ放してくるなんて思いもしなかったよ。
「お主は気配を探れるな?目を瞑ってでも周りの状況を全て把握出来ると聞いておる、それで己を見てみよ、さすれば何かが発しておるのがわかるやもしれん。感じたならばそれと同じものが体内にあるのを見つけよ」
「えっ?……あっ、はい」
何それ!?
それって先ほどのかめは〇波必要なかったよね?
しかも2度もぶっ放す必要は絶対なかったはず!!
師匠の言葉の意味がわかってしまったよ!!
早く何とかしないとこれは身体が持たないね。
坐禅を組み目を閉じて腕だけを見てみる……
うん、何故か形がわかる。これは以前に日間賀島ダンジョンで修行した時に得た力だ。で、先ほど言われた事を思い出す。身体から何かを発しているものがないかを探っていく。
………………
…………
……
うん、薄らとだけど身体中をモヤのようなものが覆っているのはわかった。
今度はこのモヤの塊……つまり先ほどぶつけられた衝撃の元のようなものを体内で探す。
あぁ、これかな?
へその下辺りに渦を巻くようなものを感じるね。
これをゆっくりと手の先に集めるイメージで……
ってさ、本来の目的って気配を消すって話じゃなかった?これだと逆に気配は増すんじゃない?
いつまた鬼ごっことか言い出すかわからないから、まずはこの薄らとしたモヤを消す……いや、とりあえずは更に薄く出来ないかを意識してみよう。
難しいなコレ。
もしかしてへその下から移動させる方が簡単なのか?それで扱うコツを覚えた方がいいのだろうか?
柳生の爺さんに助言を求めようと思ったけど、大分前から居ないんだよね。「ただ見守っとるのも暇じゃな」とか呟いたと思ったら、未だ森の中で鬼ごっこをし続けている4人を狩りに行ったんだよね。だから自分自身で試行錯誤するしかない。
………………
…………
……
「そろそろ1度飯を食わんか?」
爺さんの言葉に顔を上げると、おにぎり3つと豚汁の入ったお椀を持つ爺さんが目の前にいた。
「気付いておらんかもしれんが、お主はあれから既に2日ほどずっと集中しておったぞ」
「ふ、2日ですか?」
「ピクリともせず坐禅しておったわ」
マジかよ……
確かに言われてみれば、何となくお腹が減っている気もするけど……まさかそんなに経っているとは思いもしなかったよ。
「ほれ、皆も心配しておる。元気な顔を見せてやらんか」
爺さんの視線の先を追うと、鍋を囲んでこちらを見つめている香織さんたちの姿があった。
「生きてるよね?大丈夫?」
「殺しなんてしないって言ってるだろうに」
「香織は心配性ですからね〜」
「大丈夫です、生きてます」
「まるで仏像のようだったよ、ピクリともしなかったし。何してたの?」
そうですかそうですか、香織さんが心配してくれていたのですか。なんか嬉しいです。
とりあえず質問されたので、この2日?……実感はないけど2日間やったいた事を話すと、何故かうどんが大きく頷いた。
「だから主様の魔力の純度が上がっているのですねっ!」
んんんっ!?
また新たな言葉が出てきたぞ?純度って何だ?
「純度?」
「はい、純度です」
そんなものは感じなかったぞ?
これまでは移動や薄く纏う事が難しく出来なかったので、とりあえずへその下に感じた魔力をハッキリしっかりと感じられるようにとその場でぐるぐる回してたんだけど。
疑問に思ってさらに質問を重ねるとうどんをはじめとした召喚獣たちが口々に答えてくれた。それを纏めると、通常の魔力には濃薄があるそうだ。その薄いものはスキルの使用には向いていないために老廃物のように日々体外へと放出され続けている。だが偶然にも体内でぐるぐると掻き回し続けたせいで、濃薄が入り交じりつつも薄いもの……つまり使えない魔力をいつの間にか弾き出したらしく、体内魔力が純度の高いものだけになったとの事らしい。
んんっ?
って事は、当初の目的である体外へと放出している魔力を薄く出来たという事かな?
よし、目を瞑って感じてみよう。
「これ、とりあえずは飯を食わんか」
そうだった、食事のために呼ばれたんだったよ、忘れていた。
とりあえず魔力の事は一旦忘れることにしてる、香織さんたちのこの2日間の修行内容を聞く事にしたんだけど……ずっと狩られ続けていたらしい。そしてロンは騎龍となっていたと。
それでか!!なんかロンと香織さんを初めとした狩られる側の4人との間に見えない壁のようなものを感じたのは。なんか可哀想なので呼び寄せ抱えてご飯をやる事にする。この蛇皮というか肌触りがいいんだよね。
食後また自分自身を見てみると、確かに先日より魔力の放出が薄くなっていた。
「うむ、ようここまでやったの」
おおっ!褒められたよ。
「その体内で魔力を捏ねくり回すのは常時行うようにの。無意識時でも常に行えるようになるまでやり続けよ」
「はい」
「さて、では今度は体内を移動させよ。それが出来たらさらに体外へと放出する魔力を、己の意識のみで薄くしたり濃くしたり出来るようになる」
ついに移動か……
っとそれよりも先に気になった事があるので聞いておこう。それはオーラだ。よくオーラが出ているとか言うよね?あれも魔力なのか気になったんだよね。
「オーラはまた少し違う。それはまた後日必要となったら解説してやるでの、とりあえずは魔力を自在に扱えるようになるんじゃ」
違うらしい……
「この圧倒的オーラは!!」とか言われてみたかったんだけと、確かに今は魔力の事の方が先決だ。
やってみたところ、意外にもスムーズに魔力は体内を自在に動かせた。
だが難しかったのは体外へと出す方法だ。どうやら体内移動と体外放出はまるで難易度が違うようだ。
そしてまた試行錯誤を繰り返し……2週間ほど経った時にようやく目の前の若木の枝を揺らす程度の横川砲が出るようになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます