第94話ーー命を狙われているようです

「小僧、この五平餅は味噌に胡桃が入っておって美味いぞ」

「鮎の塩焼きもあるよ」

「この山菜そばも中々だぞ」


 香嵐渓にまで来たけれど、まずは腹ごしらえという事で観光客向けのお店に入って食事をしている。

 香嵐渓といえば秋の紅葉シーズンが有名だけれど、春前も中々風情があって美しい。観光客は少し少ないけれど、そのお陰で食事にありつけているのでありがたい事だ。どうやら師匠たち3人は時折来た事があるようで、色々な物を勧めてくれるので、中々忙しい食事の光景にもなっている。


『五平餅!!鮎の塩焼きも!!食べたいですっ!』


 なんてうどんの声が聞こえて来るけれど、未だお仕置き中なので、顕現させる予定は無い。だいたい人目のある場所で出せるわけもないしね。


「よし、では行くか」


 3人ともにたらふく食べたところで、ようやくの出発となった。ただひとつ心配というか……まぁいつもの事なんだけど、ハゲヤクザは食事というよりもガバガバと手酌でお酒を飲んでいたのが気になるところだ。まだ御神酒以外に日本酒なんて飲んだ事はないのだけれど、そんなに美味しいのだろうか……熱燗の匂いだけは嗅がせて貰ったけれど、なんかあまり好きな匂いじゃなかった。大人になるとあれがいい匂いと感じるようになるのだろうか……疑問だ。


 ちなみに運転手の人と交代要員用?の一緒に来ていた人は、交互に食事に来ていた。食べるというよりも、まるで飲み込むような早さでかき込んでだ。どうせなら一緒に食事すればいいのに……なんて思って聞いてみたところ、大事な御館様が乗る車だという事で、車に悪さされないか見張るためらしい。大変だなっと思うと同時に、神出鬼没の近衛の人たちがきっと近くに潜んでいそうなのに、そこまで神経質になる事に、少々の恐怖を感じざるを得ないとこもある。


「師匠たちって命狙われているんです?」

「ないとは言いきれんが……今はお前の方が狙われていると思うぞ?確実に」

「……先輩のファンたちですか?」

「いや、まぁそれもあるが、どうやらお前の話がどこからか漏れているらしくてな……他国の者たちが名古屋に向かって来ているなんて話も聞こえてくるから、身の回りには気を付けろよ」

「えっ?他国のって勇者の先輩狙いじゃなくてです?」

「ああ、それももちろんあるが、お前の身柄狙いも多そうだからな。くれぐれも気を付けろよ」


 バレンタインデーのお宅訪問での件かと思ったら違ったらしい。しかも身柄狙いって……いつの間にそんな事態になっていたのか。


「安心しろ、孤児院には警護の者をつかせてある」

「ありがとうございます」


 全く気付かなかった。

 師匠の優しさがありがたい……が、このまま孤児院に居ていいものだろうか?かといってどこかにアパート借りるとかも現実的じゃないしな……うーん、困るな。


 ってか、何で俺なの?

 確かに未だ俺にしか出ていないjobではあるけれど、そこまで他国が騒ぐ程なのかな?って疑問は拭えない。


「その顔は己の重要さがわかっていないようだな。いいか、世界は日々ダンジョンの謎を探している。そして下層を目指している。ここまではいいか?」

「はい」

「例えばだ、これまで発現した職は、どれもが既に実在する職だった。だがお前の職は明らかに想像上の職だ、幻の職のようなものだ。これはどの国にも居らん、世間一般が誰でも知る仙人やスーパーマンなんて者も居らん。それだけでも捕らえてその秘密を探りたいと思う者が出てきてもおかしくない。更にそのスキルの数々はほとんどがまた未知なものだ。しかもありえない能力を秘めている……うちの纐纈のようにその身体を切り刻んで研究したいという者が出てくるのも不思議ではない」


 仙人は居ると思ってたんだけど居ないのか……

 それにしても纐纈さんのようなマッドサイエンティストは、世の中に沢山いるって事実が恐ろしいね。確かにそんな人に捕まったら、死なない程度……エリクサーで生きている程度に毎日切り刻まれそうだ。

 って夏のあの一件を思い出してしまって、ちょっと嫌な気分と恥ずかしい思いが湧き上がる。


「お前の体調など身体の事を考えなければ、先日の炎獄のようなスキルを延々と放ち続ければ、確かに下層まで行けるだろう。そうしてお前は地上に出る事は許されず、一生をダンジョンの中で過ごす事にもなるだろうな」


 言われてみれば確かにそうかもしれない……そう考えると、師匠たちってめちゃくちゃ優しい!?確かに体調の事は考えてくれているし、俺のスキル頼りで下層を目指すのでは無く、あくまでもスキルは補助と考えているようだし。


「わかったか?我らもお前の事は守ってやるつもりだが、お前自身もそれを踏まえて気を付けろよ。特に街中でスキルを大々的に放つ訳にもいかんのだ、それ故に身体能力をもっと鍛えろ」

「はいっ」


 以前は勝手に忍者組織に組み込まれた事を恨んだりしたけれど、今は逆に紹介してくれて良かったと思えるね。

 まぁアマとキムは巻き添えにしちゃったかもだけど……今度謝っておこう。


「その顔は……ふむ、天野くんと木村くんの事だな。各国それぞれに優秀な人材を抱え込む事を考えている。それ故に彼らの職もお前ほどではないがかなりの稀少性を持っているからな、伊賀の衆に迎え入れられる事は幸せだったと思うぞ」

「……そうですかね?」

「ああ、お前がもし居なくても、伊賀は迎え入れていただろう」


 そうか、そう言って貰えると少し心が楽になる。俺のせいで忍者組織に組み込まれて、毎日鬼のような修行をさせられていると思ったら、やりきれないからね。


 そんな話をしていたら、ダンジョンに到着したようだ。

 ダンジョン前の探索者協会に挨拶をしてから、早速探索する事となった。話を聞いたところ、どうやら先輩たち以外に潜っている人たちはいないようだ……本当に人気のないダンジョンなんだね。そりゃあ溢れる危険性を感じるほどにもなるよ。

 今回の依頼だが、特別な依頼料金などは発生しないらしいのだが、その代わりに魔晶石や一部ドロップの買取金額は1.5倍らしい。


「さて潜る前に一応スキルを確認しておくぞ」


 ◆

 火遁(MAX)……火球(MAX)―火の玉を前方に10個同時に放出できる。

 ……火矢(MAX)―火の矢を前方に10個同時に放出出来る。

 ……炎雨(MAX)―前方に炎を雨のように降らせる。

 ……炎壁(MAX)―指定の場所に炎の壁を100分間作る。

 ……炎蛇(MAX)―炎で出来た蛇。対象を追って攻撃する。1,000m以内。10匹。

 ……炎爆(MAX)―炎の球を前方に放出し爆発させる。同時発射数10

 ……炎地(MAX)―指定の場所の地面を炎に変える。100m四方

 ……獄炎(MAX)―着弾した相手の魔力・生命力を糧とし、それらが尽きるまで消えない炎。最大1発の炎の玉を前方に打ち出す。1km以内

 ……炎纏(MAX)―己の身を炎へと変える。連続時間100秒

 ……炎獄―己の見える範囲の全てを炎だけで形成された地獄へと変える。解く時は、九字を切った後に「解」を唱える。

 

 闇遁(MAX)……影潜り(MAX)―330分間影の中に入る事ができる。対象が動いた場合は自動的に動く。他の影と重なった場合、移動出来る。

 ……影操身の術(MAX)―入っている生物の影の中から、その者を操る事が出来る。連続使用時間150分

 ……影牢の術(MAX)―影内に居る対象を、影で出来た魔法の牢に60分間閉じ込める。

 ……影蛇の術(MAX)―自分の影から蛇を作り、対象を追って行き巻き付き影を発生させる。また身体を這い締め付ける。10匹。

 ……影沼の術(MAX)―自分の影と繋がっている影に対象がいる場合、影へと飲み込む事が可能。同時対象4つまで。(影内は空気がない為に生物は窒息する)排出時は任意のタイミングで行える。

 ……影狼の術(MAX)―自身への敵意ある不意打ちなどから守る狼を、自分の影内に潜ませる事が出来る。(物理攻撃のみ)10匹。

 ……影槍の術(Lv7)―影から槍を出す。己を中心とした直径700m以内の影から。

 ……闇玉の術(MAX)―前方に闇の玉を1つ放出する。触れた魔力を持つ生命は吸い込まれ消える。1000m以内。

 ……闇纏の術(MAX)―己の身を闇へと変える。連続時間100秒

 ……闇獄― 己の見える範囲の全てを闇だけで形成された地獄へと変える。解く時は、九字を切った後に「解」を唱える。

 

 水遁(MAX)……水球(MAX)―前方に水球を10個放出出来る。

 ……水矢(MAX)―前方に水矢を10個放出出来る。

 ……霧雨(MAX)―指定した場所に霧を発現させ、視界を悪くする。100m四方

 ……氷壁(MAX)―指定の場所に氷の壁を100分間作る。

 ……水蛇(MAX)―近くの水源から水で出来た蛇が対象を追尾して攻撃する。同時放出数10

 ……氷蛇(Lv7)―氷で出来た蛇、対象を追って攻撃する。また当たった箇所を凍らせる。同時放出数10

 ……氷爆(MAX)―氷でできた玉を前方に放出し爆発させる。同時発射数10

 ……水牢(MAX)―水の玉を1つ前方に放出する、触れた生命体は水の中に取り込まれる。連続時間60分

 ……津波(MAX)―前方に津波を起こし、全てを薙ぎ倒し飲み込む。

 ……氷獄― 己の見える範囲の全てを氷だけで形成された地獄へと変える。解く時は、九字を切った後に「解」を唱える。


 風遁(Lv7)……鎌鼬かまいたち(MAX)―前方に風の刃を飛ばす。同時発射数10

 ……旋風(MAX)―前方に旋風を放出する。同時発射数10

 ……雷雨(MAX)―前方に雷を雨のように降らせる。

 ……風壁(Lv8)―指定の場所に風を壁を起こす。100分間

 ……雷蛇(Lv7)―雷で出来た蛇、対象を追って攻撃する。当たった場所は痺れる。同時発射数7

 ……風爆(Lv5)―前方に圧縮した空気を放出する。着弾後かまいたちを四方に発生させる。同時発射数5

 ……雷爆(Lv4)―前方に雷の球を放出し、爆発させる。同時発射数4


 土遁(Lv6)……穴掘り(MAX)―任意の場所に穴を掘る。1000m以内。10m×10m×10m

 ……土槍(MAX)―土で出来た槍を前方に放出する。同時発射数10

 ……畳返し(Lv8)―床に手をつけ唱える事により、その場の物が立ち上がり攻撃を妨げる。8m×8m

 ……土壁(Lv6)―指定の場所に土壁を60分間たてる。

 ……木操(Lv5)―範囲内の木を思うように操る。直径500m以内

 ……土蛇(Lv4)―土と木で出来た蛇を発射する。同時発射数4


 時空遁(Lv3)……先読み(Lv4)―対象の動作の0.4秒先の動きを読む事が出来る。

 ……気配察知(Lv3)―300m以内の魔力を放つ生物の動きを察知する。

 ……時空間庫(Lv2)―異空間にあらゆる物を時を止めたままに保管する事が出来る。2m×2m×2m

 

 口寄せ(Lv6)……鼠(MAX)―鼠を10匹魔力によって召喚できる。鼠は魔力で出来ている為に死んでも再度の召喚が可能。念話により意思疎通が可能。攻撃は不可能。存在時間は10時間。

 ……鴉(MAX)―鴉を10羽魔力によって召喚できる。鴉は魔力によって出来ている為に死んでも再度の召喚が可能。念話により意思疎通が可能。攻撃可能。存在時間は10時間。

 ……虎(MAX)―虎を10頭魔力によって召喚できる。虎は魔力によって出来ている為に死んでも再度の召喚が可能。念話により意思疎通が可能。攻撃可能。存在時間は10時間。

 ……蟹(MAX)―蟹を10杯魔力によって召喚出来る。蟹は魔力によって出来ている為に死んでも再度の召喚が可能。存在時間は10時間。攻撃可能(口から泡を出し、相手の魔法攻撃及び物理攻撃力を減衰させる)

 ……(大鷲MAX)……大鷲を1羽魔力によって召喚出来る。大鷲は魔力によって出来ている為に死んでも再度の召喚が可能。存在時間は10時間。攻撃可能。羽ばたきによる風魔法を使用出来る。

 ……(狐MAX)……妖狐を魔力により召喚出来る。

 

 分身(Lv78)……分身(Lv78)―魔力で出来た分身を78体作る事が可能。命令をこなす事が出来る。行動により見聞きした物や経験を共有出来る。話す事も可能。存在時間は78時間。


 相位転身(MAX)……相位転身(MAX)―自身と分身の位置を入れ替わる事が出来る。対象分身を目視するか思い浮かべ、九字印の臨の手印を行う事により可能。


 刀剣術(MAX)……刀剣を扱う事が出来る。背面に2本装備可能。「抜刀」「納刀」の発動句により手に刀を装備出来る。刀剣での攻撃の際威力があがる。

 

 二刀流術(MAX)……二刀流での行動が出来る。


 手裏剣術(MAX)……手裏剣を投げる事が出来る。


 格闘術(MAX)……格闘による攻撃の際、攻撃力が上がる。


 飛斬術(MAX)……斬撃による衝撃を飛ばす事が出来る。


 跳躍(MAX)……身体能力+50mの高さまで跳躍距離が伸びる。

 

 空歩(MAX)……跳躍時に空中で10歩歩ける。


 浮遊術(MAX)……30分間宙に浮く事が可能。

 

 壁面歩行(MAX)……180度の壁を床と同じように歩ける。

 

 水面歩行(MAX)……100分間水面を走る事が出来る。


 毒耐性(MAX)……毒に耐性がある。

 麻痺耐性(MAX)……麻痺に耐性がある。

 石化耐性(MAX)……石化に耐性がある。

 睡眠耐性(MAX)……睡眠魔法に耐性がある。

 魅了耐性(Lv7)……魅了魔法に耐性がある。

 火炎耐性(MAX)……火炎属性による攻撃を80%防ぐ

 水氷耐性(MAX)……水氷属性による攻撃を80%防ぐ

 闇耐性(MAX)……闇属性による攻撃を80%防ぐ


 九字印術(Lv56)……九字印をきる事で、集中力を高める。

 ……九字印をきる事で、自己治癒力を高め、傷を治す事が出来る。

 ……九字印をきる事で、体内魔力を回復する。

 ……九字印をきる事で、あらゆる状態異常を解く事が出来る。また他人の目を見て目の前で行った場合、その者の状態異常をも解くことが出来る。


 鑑定阻害(MAX)……鑑定スキル・魔法のレベル10以下を阻害する。

 ◆


 なんか色々大変な事になってるし、おかしなモノも多い……


 特に土遁の畳返しだ、何で土遁なのか?そして畳じゃなくても出来るという謎仕様。

 そして時空遁って何!?先読みはありがたいけど、どうやら師匠たちにはあまり役に立たない模様です……こちらが先読みして動けば、すぐさま変えられるのです、なので意味なし。時空間庫は先輩のアイテムボックスの上位互換のようだ。気配察知なんだけど……俺の知っている気配察知とはまた違うようだ。今なら先輩の「なんか違う」って意味が分かる。生命の動きしかわからないから不便だよね。


 本当に意味がわからないスキル各種だ。

 確かにこんなスキルばかりだと、研究者が調べて見たくなる気持ちもわからないでないかも!?

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