第3話ーードキドキタイム
やって来ました、名古屋栄ダンジョン。
ここは3階層型の定着タイプで、1階は広間と小部屋が2つありモンスターは一切出ない。その為にステータスチェック用ダンジョンとして利用されている。
なんでダンジョンでチェックするかといえば、最初は約1時間ほど魔法の素……魔素に身体を馴染ませないとダメらしい。1回ステータスを表示出来るようになったら、それからはもうどこに居ても大丈夫なんだけどね。実際小学生から高校生のチェック前まで自宅などでステータスチェックをだれもが自分でしてみるけど、一切出たという話を聞いた事は無い。
「……であるからして、皆様にはくれぐれも〜」
到着して、クラス内で整列してから早数十分……探索者協会の偉い人らしき禿げあがった太ったオッサンがなんか話してる。確か協会に入社する為には<鑑定士>が職業に出ないとダメなんだっけな。全くそうは見えないけど、ステータス第一主義な世の中だから間違いはないんだろう……多分。
まぁ天下りも多いらしいけどね……
「もしステータスが出なかったヤツはどうなるんですか!?」
「残念ですが……18歳まで、約後1年をきる人もいるのかな?まぁそれまでに出ればいいとしか言えませんね」
「出なかったら拘束されて人体実験素材になるって本当ですか?」
「誰がそんな話を?そんな事はありません」
いつの間にか壇上に立っているのが偉いオッサンから、若い説明係の人に変わっていたと思ったら、クラスのヤツが質問攻めにしているよ。
そんな事聞かなくてもいいのに、どうせまともな返答なんてあるわけないんだし。人体実験の噂は確かにあるけど、そんな人権無視の話を認めるわけがないって。
「でも孤児でどこで産まれたかもわからないようなヤツの方が欠陥品の確率高いんですよね〜」
なんでこっちをチラチラ見ながら言ってるのかと思ったら、それが言いたくて見てたのか。
確かに俺は孤児院育ちだ。名古屋北ダンジョンの69階層に捨てられていたのを、アメリカ人シーカーが見つけてくれて国家運営の孤児院に預けられたらしい。
でも今時孤児なんて珍しくないんだよね、ダンジョンシーカーの両親が探索中に亡くなってしまった場合や、突発型ダンジョン発生に伴いそれに巻き込まれて亡くなってしまう場合もあるからさ。事実親友の
「そういう事実は御座いません。またステータスの出ない方の理由は現在も研究中ですが、原因は未だわかっておりません」
そう、そんな事実はないんだけど……あの係員、欠陥品発言を咎めようともしなかったな。
若狭は両親が3D級シーカーで、テレビによくコメンテーターとして出演しているらしい。有名人の子供なのが自慢なのか、取り巻きのヤツらと一緒になってちょくちょく知った顔で絡んでくるのが面倒くさい。
「はい、ではそろそろ1時間経過しますので、出席順で呼ばれたら小部屋に移動して、そこにいる係員に指示に従って下さい」
キタ!
ドキドキする、これで人生決まるといっても過言ではないしね。
待っている時間が長く感じる……
ここで表示させてみたいけど、もし万が一出なかったら……みんながいる前でとか耐えられない。他の人達も同じ思いなのか、固唾を飲んで呼ばれるのを待ってるし。
今のところ3人戻ってきて、誰もが明るい顔をしているから表示は出来たんだろうな……それがどんな職業かはともかくとして。
「次、天野、天野睦人くん」
おっ、アマの番だ。
「なんか遅くない?」
「こんなもんじゃね?」
なんか心配になってキムに聞いたら、何言ってるんだって顔して返事があったけど……心配しているの丸わかりだよ、めちゃくちゃ三角座りした膝が揺れてるし。
「江藤、江藤葵」
おっ、アマが戻ってきた……顔は……満面の笑みだ。
「どうだった?」
「俺の時代が来たかもしれん」
「何が出たんだよ」
「学生だろ?」
「聞いて驚くな?稀少ジョブの薬師だ」
「「マジで!?」」
「うむ、マジだ」
薬師といえばポーションとかを販売している製薬会社が高待遇で迎えてくれる職業だ。薬士も製薬会社に入れるけど、それよりもエリートなのが薬師だ。入社試験もないし、それどころか契約金を提示され、三顧の礼をもって迎えられるという噂さえある。
「すげーな、将来安定じゃねぇか」
「まぁな、これでお前達がもしステータス出なくても養ってやるよ、使用人として」
「ふざけんな」
「ねぇわ、それは無い。でもなんでお前が薬師?ぶっちゃけ薬とか習った事ないだろ?」
「俺さ小さい頃身体弱くて入院ばっかりして、薬漬けの日々だったからそれかも知れん」
えっ?そんな理由?
でも確かにそう言われれば納得も出来るというか……ヒョロメガネだし。
職業システムは未だ解明されていないんだから、悩んでも仕方ないんだろうけどさ。
「お、俺だっ!ちょっくら俺も稀少ジョブGETしてくるわ」
キムがそう言って小部屋に向かって行ったけど……
言ってることはカッコイイけど、産まれたての小鹿みたいに脚が震えまくっててカッコ悪い……ってか笑える。
「アイツ何かな?」
「性格を考えると……魔王とかありそうだ」
「あぁー確かに、態度でかいからな」
実際には魔王なんて職業は未だ発見されていないから、ありえないとは思うんだけどね。
だけど、何があるか分からないのが職業システムだ。
「ただいま」
大きく手を振りながらデカい声で帰って来たって事は、職業でたなこれは。
「何が出た?魔王?」
「あれだろ?ヒモとかだろ?」
「誰が魔王でヒモなんだよ……」
こいつ無駄にイケメンなんだよな、顔だけは。態度悪いし、俺ら3人以外にはコミュ障気味だからモテないけど。
「聞いて驚くなよ?」
「それさっきもそこのメガネから聞いた」
「二番煎じオツ」
「黙れ、俺の職業はなんと刀鍛冶師である」
「「おおっ!」」
鍛冶師にはいくつか種類があって、武器・防具は何でも作れるけど、専門鍛冶師よりは1割2割性能が落ちる。刀鍛冶師はその専門職で、特に刀は日本特有職業だ。
「で、何で?」
「お前刀になんか興味なかっただろ」
「うむ、多分だが深夜アニメの
たった1日見ただけで職業に出るのか?
「……昨夜?」
「……1週間ほどかも」
「……本当は?」
「……ここ2年ほど」
「お前興味ないって言ってなかったか?」
「……しょうがないだろ!薄緑ちゃんが可愛いんだよっ!」
この野郎、ついに開き直りやがった。
何が薄緑ちゃんが可愛いだよっ!
可愛いのは唐柏さんの方が最高だろうがっ!
ってそんな事は今はいいか……
「じゃあ、卒業したら武器会社に入社か?」
「多分そうなるな、そして修行だな」
「でもまぁ、これで2人とも安泰だな」
あとは俺だけ……
神様お願いします!!
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