第13話 像を結ぶ少年4
聞きなれない単語に零香は困惑する。
「精鋭科。能力特別科から各学年何らかに特化したり、優秀な人間で構成される能力特別科と兼科している科だね。山里が知っているなかでは玲がそう。後、博夢と幸二や俺も一応。あとは覚えてるか知らないけど玲央もだ」
そこで多くの名前が出てくる。
「そんなにも周りにいたんだ……」
「というより、俺がそうだから必然的に周りがそうなだけであって山里が気づかなかっただけだぜ」
そう笑いながら返される
「そ、それで私が精鋭科に入るって言われてるのは……? 」
「さあ、玲から通達があったから」
あっけらかんとした返事が返ってきた
「ここでは中村くんの絶対王政か何かがあるの!? 」
「そういう訳じゃないけど、玲の言うことって的を射ていることが多いから誰も反対しないだけ」
すかさず光輝は返す
「今回俺は反対だ。こんな弱っちい奴、生き残れるわけないだろ」
「ごもっともです」
「ただ……」
光輝は続ける
「あのとき俺の幻覚から逃げていた時間は少なくなかったはずだ。その幻覚から逃げ切るまでの1つも立ち止まらずに高瀬に合流した。その根性だけは認めてやるよ。頑張れば? 精鋭科」
「え……」
零香の予想とは違う方向に話が転換しだした
「俺は反対なんだけど。山里が精鋭科に入る必要はないと思う」
「高瀬くん……」
友也が零香の気持ちを読んで話を返してくれたのだろうか。その期待は間違いだった
「だが、玲が決めたならそれ相応の理由があると思う。安易に反対はできない」
「なんだよ高瀬。ボディーガードのつもりか? そいつは精鋭科に入ると自ら志願したんだろう? ほっとけそんな奴」
「してません! そんなこと! 」
「は? 」
友也は思い返したように光輝に言った。
「あれ? 気づいてなかったの二階堂? あんなの玲のはったりに決まってるじゃん」
「は? ……え? 」
光輝は混乱している。
「思い返してみろって、俺等が精鋭科に入ったとき、どういう風に入ったか」
「どんな感じだったの……? 」
零香は聞いたことを後悔した。
「確か……精鋭科に入るか死を選べと究極の二択を迫られたな」
光輝は思い返した
「そうだろ。因に、俺の時は春のクラス替えの書類を精鋭か兼科するという文言を知らずにスルーした結果、これまた知らない内に同意してた」
「あ、その書類に幻覚かけたの俺」
「お前か二階堂」
「ちょっと待って! 2人とも恐喝に書類偽造受けてるじゃん! 」
「まあ、それが玲だし」
2人の息はぴったりだった
「しれっと言うことじゃない! 」
「まあ、玲の頼みならどのみち入ってたよ。俺は」
「俺はわからないな、……まあ、入ってたろうな。玲の頼みだし」
「この学校は中村くん中心に回ってるの? 」
「ああ。まあ、単純にあのワーカーホリックはほっとくとぶっ倒れるまで仕事するバカ仕事人間だからな」
「どっかでブレーキかけてやらないと。今だって多分博夢に怒られて仕事止めてるんじゃないかな」
「俺仕事持ち帰るだろうに一票」
「俺は夜間任務にいくだろうに一票」
「どのみち仕事してるよね!? 」
「まあ、玲の事はいまどうでもいい。お前はどうするんだ。山里零香」
「な、何をですか? 」
光輝は手を一度叩き合わせた。徐々に景色が変わっていく
「精鋭科だよ。俺の承認が必要ならやる。玲央もくれるだろう。本当に入るのか? 精鋭科に」
「入らないよ! そんな物騒なところ」
「そうか。……まあ、お前と仕事したかったというのは多少本音だが、良いだろう。玲にはそう伝えといてやる」
「あ、ありがとう!二階堂くん! 」
「おう。あ、光輝で良いよ。そっちのが短いだろ? 」
零香の表情が明るくなる
「……うん! 光輝くん!」
「お、俺も……友也で良い」
友也の耳は赤い。それに気づいた光輝は意地の悪い笑みを浮かべる
「えー友也くーん。 どうしたのかな? 」
「うるせえ黙りやがれ! 」
「…うん! 友也くん! 」
「……おう」
「あれー? お耳が真っ赤ですよ。ゆーうやくん」
「うるせえ! つかお前は黙ってろ二階堂! 」
「冗談。そんなに怒るなって! 」
零香は始めてみる友也に混乱する。それを察してか友也はすぐに零香の方に意識を向ける
「と、とりあえず。これでお前らからは終わりだろ? 二階堂」
「ああ。玲からも報告は要らないって聞いてるし、今日はこのまま4人で帰ろうぜ! 」
「野々原は良いけど二階堂は置いて帰る。どうせこの辺りにいるんだろ? 出てこいよ。野々原」
屋上の扉付近から玲央が出てくる
「さすが高瀬。よく気づいたね」
「い、いつの間に……」
「これが俺の能力の使い方の1つだよ。山里零香」
「そ、そうなんだ。……どんな能力なの? 」
「誰かから聞いてない? 俺の能力は”基地局”任意の場所に扉を作り、基地局を作る。基地の使用は様々。大体は俺が想像した通りのものを作れる」
「すげえ。野々原が自分から自己紹介した」
「友也。後でちょっと」
「サーセン」
零香はこの光景が少し懐かしかった。特に親しい男友達がいたわけではなかったが、普通科にいたときに、クラスでたまに見た光景だった。それに気づいた友也は、自分じゃどうもできないことを察し、あえて、気づかない振りをした。
「さて、そろそろ夕飯が出る時間だ。寮に帰ろうか」
光輝と友也がいるのではあのノリは続くと感じた玲央は早々に話を切り上げ帰ることを促す
「そうだな。帰るか、山里。女子寮の前まで送っていくよ。いくら不審者の出ないランキングだと余裕で1位を争えるからと言っても、危険だしな。」
「あ、ありがとう。友也くん」
「あ、高瀬が珍しく紳士してる」
「どういう意味だ二階堂」
4人の男女は笑い合いながら帰っていく。職員室からそれを見るものが1人
「あれが、俺たち能力者が失った日常ってやつか……。」
奥からもう1人、日栄が茶化しながらでてきた。
「どうしたのケイ? 能力なんかつかって。聞き耳? ばれたら怒られるよ」
「ま、ばれなきゃ良いんだよ。それより、帰るぞ。精鋭科以外の生徒は彼女で最後だしな」
「はーい。全く。ケイは真面目だね。こんなの業務でもないんだからほっとけば良いのに。不審者が入るわけでもないし」
「そういうなよアオ。後、一応ここ校内な。俺の事は月浪先生か、
「誰も聞いてないんだから良いじゃーん。というか、ケイも自分の名前嫌いなくせに」
「はいはい、何とでも言え。とにかく、学校じゃ本名な」
「……はーい」
日栄は不服そうに答える。
「不貞腐れるな。夕飯好きなもの作ってやるから」
「ほんとに!? じゃあ、オムライス! 」
日栄の期限は1発で直る。月浪は気にしていないのかいつもの調子でかえす。
「はいはい」
「そういえば、さっき精鋭科以外って言ってたけど、また玲が残ってるの? 」
「ああ。昨日の二階堂に続いて、今日も1人帰ってくるしな」
「玲も働き者だねー。そういうところ似たんじゃないの? 」
「馬鹿言うな。そこまで俺は勤労はしていない」
「そういわれて嬉しいくせに。まあいいや、早く帰ろう! 俺、オムライス楽しみ! 」
間も無く、職員室からも人気が消える。また同時刻、玲の前には、見た目が不良の少年がいた
「おかえり。
「……ただいま」
「顔が不服そうだな。昨日も見たよ」
「二階堂も反対だったのかよ。じゃあ言う必要はないよな。俺も反対だ」
「俺も通達したろ? 反対意見があるならテストしてみろって」
「テストするまでもねえよ。逆に聞く。なぜあいつなんだ? こんな世間知らずそうな普通の女子。精鋭科に来る意味が分からん」
「あいつも今、わかってないさ。自分が何故、精鋭科に呼ばれてるか。だが、そのうち自分で来たいって言い出すからな。そういうやつだと分かっているから」
「……ますます、意味が分からん。とりあえず、玲に話しても話は平行線のままだと言うことは分かった。」
「わかってくれて何よりだ」
「分かったよ。じゃあ玲の言うテストってやつをしてやろうじゃねーか。その代わり、死んでも文句言うな」
「まあ、そうはならないだろうな。やってくるといい。意味は分かるから」
「ああ。山里零香……お前を精鋭科には、認めない」
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