第12話 像を結ぶ少年3

「……」


「ご立腹だね。高瀬」


「悪いな」


「全く思ってないくせにそれを口に出すなよ。二階堂ニカイドウ


友也は目の前にいる2人に言う。友也は一瞬の内に玲央のいる部屋まで来ていた。玲央は目の前のパソコンをいじっていて、二階堂は体を軽く動かしていた。



「どういう真似だ? 学校の強制転移装置まで使って」


その問には玲央が答えた


「玲から通達。山里零香がうちに入ることになる。それが嫌なら、本人にテストをして見て決めると良い。本人の事も知らず抗議に来るのは面倒だからなし。だそうだ。俺はぶちゃけどうでも良いっていったら、じゃあ付き合えって光輝が言ったから付き合ってるだけ」


「俺のところには来てない」


「まあ、来たのついさっきだし」


「……じゃあ二階堂は最初から聞いてたと」


「昨日帰ってきたら玲からな。だから俺が今ここで準備してるんだろう? 」


「通達遅いっての! 」


思わず友也は口に出す


「遅いと不便? 別に君には関係ないことだろう」


玲央は見向きもせずにたんたんと返す。


「それは……」


友也はここで口ごもる。その通りのために言い返せないのだ。友也にとっての気まずい間は準備運動を終えた光輝にとって破られた


「さて、そろそろ時間だから俺はいくぜ」


「いくって、どこに」


「ああ、友也は勝手に強制転移させたから知らないんだっけ? 玲が言ったろ? テストすれば良いって、だから俺からのテスト。俺の能力下の中での鬼ごっこ」


「は!? お前の能力で逃げられる奴は早々いないって! 山里をどうしたいんだよ! 」


「俺は絶対にあいつを認めない。だから、ここでその目標は潰す。玲央、ここまで手伝ってもらったけど手出しは無用だ。俺一人で終わらせる」


「了解」


「おい! 二階堂! 」


用件が終わると光輝は動き出す。光輝が出ていくと扉は鍵が掛かる音がした。


「チッ」


友也はどうしようもできない感情を舌打ちで逃がす。


「友也。君は変わったね」


「は? 変わってねーし、そんな短時間で変わるわけないだろ」


「いや、変わったよ。君は」


玲央はキーボードを操作しながら会話を続ける


「どこが」


「根本的なところだよ。君の主な任務は潜入捜査だ。それは、君の能力”サトリ”によって、他人の心が読めてなおかつ、誰にも感情移入してこなかったからだ。」


「ああ。理解してるさ」


「そう、君は他の人に対して感情移入してこなかった理由。それは単に、君が他人に絶望をしていたからだ。誰にも期待していないからだ」


「……ああ」


「そのはずが、きみは山里に対してやや過保護になっている面はないかい。これは紛れもない事実だ。君、彼女を保護対象と勘違いしてない? 」


「……間違ってねえよ。何でそんなこと聞くんだ? 」


「少なくとも、俺にはそう見えるってことさ。少なくとも、きみは山里零香に対してはもう他人としてみていないんじゃない? 」


「……」


玲央は一度友也のことをちらりと見ると、手元にある扉の開閉スイッチを押す


「野々原!? 扉! 」


「何? 俺はエアコンのスイッチを押しただけだけど。換気しないとさ」


「……野々原、ありがとな」


「なんの事? さっさといけば? 」


「おう」


友也が出ていくとしばらくして、ボタンをもう一度押した。


「来るなら言ってもらわないと、コーヒーの用意はないよ。玲」


「俺としても、来る用事はなかったんだがな」


「のわりには今目の前にいるんだけど」


「いや、お前の目の前は今全部モニターだから」


「細かいことは良いじゃない。なんで来たの? 」


「……何故、友也を外に出した」


「いけなかった? そういう話は聞いてないけど」


「悪いとは言ってない。が、興味はある」


「ふーん、玲もその口? 」


「なんの事だ? 」


「とぼけないでよ。まあ、今は良いや。高瀬でしょ?

むしろ玲は興味ないの? あの高瀬が、俺たち以外の他人に心を開きかけてるんだよ。短時間でいかせた山里零香に興味をわくなと言う方が俺には無理なんだけど」


「……そうか」


玲はモニターを少し見てから出ていこうとする


「最後まで見なくて良いの? 」


「ああ。勝敗はする前から分かってたし」


「そう」


会話が終わると、玲は部屋から出ていった。

一方の零香は、廊下を走っていた。校舎内の時計は午後5時30分を指している。といっても、先程の教室は午後4時20分を指していたために今は時計は信じられない代物だった。


「どうして、!さっきからいつもの学校と違う気がするし……」


「鬼ごっこ、そろそろ飽きなイ? 」


豹変した友也は、余裕の表情でついてくる。


「さっきから、距離が、全く変わら、ない」


零香の体力は底をつきかけている、一度でも止まるともう走れないだろう。無我夢中で走り続ける。


「山里! 右に曲がってこい! 」


諦めかけたその時、壁から声が聞こえてきた。壁だったが、迷わずそっちの方向へと走った。何故か壁にはぶつからず、目の前にもう一人友也が現れた


「高瀬くん! 」


「話は後! 目の前の階段上れば屋上だから。行くぞ!」


「う、うん! 」


零香は最後の力を振り絞って屋上への階段をかけ上った。屋上の扉を開けると同じ制服を着た少年がいた


「やっぱり、ここにいると思ったよ。二階堂」


「誰? 」


「現在時刻5時20分。まさか鬼ごっこのタイムリミットより先にこっちに来るとは」


「こいつは二階堂光輝ニカイドウコウキ。山里は今までこいつが作り出した幻覚と鬼ごっこをしてたんだよ」


「会うのは始めてだな、山里零香。改めて、二階堂光輝だ。俺の能力は。その名の通り、幻覚を作り出せるのが俺の能力だ」


「じゃあ、今までの高瀬くんは……」


「鬼ごっこの俺は全部幻覚だな」


「よかった」


事情を知っている2人は先に話を進めていく


「さあ、先に判定を聞こうか」


「……戦おうとする意思はまるでゼロ。だけど、ガッツはありそうだ」


「それは良かった」


「……良かねーよ。高瀬、俺の邪魔しやがって! 」


「え? 」


零香は話しについていけない


「お前も、山里零香! 俺は認めないからな! こんな奴。すぐに死ぬのが落ちだ! 」


「認めない? 死ぬ? ……なんの話ですか? 」


「とぼけんじゃねーよ! お前が俺等が兼課しているに入りたいって志願したって聞いてるんだからな! 」


「え? 何それ!? 」


もちろん零香も初耳である

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