第11話 像を結ぶ少年2

「さてと、これでもここは接待場といったら良いのかな? よく、個人間での話でも使うから飲み物は豊富だぜ? なにが良い?」


そう言って、手元にあった冷蔵庫を漁る。聞きながらも、手元はそんなに迷っていない


「……分かるのに聞くの?」


「別に良いだろ。コミュニケーションって奴だよ」


分かっていたようにジュースを見つけ零香の前に差し出す。友也のもう1つの手には缶コーヒーが握られている


「因みに俺はコーヒー派。玲もそう」


「いきなり紹介? 」


「普通の人ってこういうのからじゃないの? 飲み物の好みとか」


友也は首をかしげる


「……そうだね。大体そういうのから話し始めるよ」


零香はジュースを一口飲んでから話を始める。


「で、玲の話だよね? 何話せば良いかな。とりあえずプロフィールから? 」


「そこは普通の導入部じゃない!? 」


「じゃあ、なにが良い? 普段の生活? 」


「それは、先生と親が懇談とかで話すやつ! 」


「じゃあ……何だろう」


「そういう話したこと無いの!? 」


「ここでは、見て覚えろ精神だから。お陰で観察眼は鍛えられる」


そう言って友也は笑う


「そういう問題じゃないような……まあ良いや、じゃあ、高瀬くんはいつ知り合ったの? 」


「俺がここに来たときが小学校4年の時だな」


「その時の中村くんはどんな感じだったの? 」


「え? そんなんで良いの? 」


「普通はこんな会話をするの! 」


「……そう」


友也は首をかしげながらも話を続ける。


「その時の玲ねー。今よりは、感情表現が豊かだったよ。当時からまあ、感情あんまり出さなかったけど」


「そうなの!? 今の中村くんからは想像できないね」


「そうそう。当時の玲はいつもそばに誰かいたんだよ。今は嫌われてるって訳じゃないけど、近寄りがたいって言うのか? ああいうの」


「うん。近寄りにくい」


零香は即答で返す


「玲はさ、性格はあんまり変わってないんだぜ? 昔からあんなんさ。小四の頃は、玲の隣には必ずあいつがいたんだよ」


「あいつって? 」


「玲には、幼馴染みがいたんだよ」


「……それ、本当? 」


「本当。たぶん聞いても信じないような性格の幼馴染みだろうな」


「……どんな幼馴染みなの? 」


「俺が潜入時にしてる超猫被りの性格。あれを更に正義感を加えたような性格」


「……そればかりは、嘘だと言って欲しいな」


「残念ながら、俺はそいつの性格をモデルにしたからな」


そう笑いながら言う


「その人、今もこの学校にいるの? 」


友也から返答が返ってくるにはかなり間があった。そして一言だけ返って来た


「もう、いないよ。俺等が中2の時、殉職した」


「そう、なんだ……」


友也の表情で次に出てくる言葉がわかった零香はそれ以上何も返せなかった


「俺は当時別の学校に転入してたから詳しくは聞いていないけど。とういか、誰もこの事は話したがらないと言う感じかな」


「どうして? 」


「……良い、奴だったんだよ。誰とでも仲良くなれて皆の中心にいる。言ったろ? 俺たちは傷を舐めあいながら生きているんだ。仮に立ち直れたやつがいたとしても、回りを気遣って話さない。」


「じゃあ、事件の真相は誰も分からないってこと? 」


「そういう節があるね。もっとも、噂によればこの件については玲は全てを知ってるらしいけどね」


「中村くんは知ってるの? なんでも知ってるね、中村くんは」


「玲ってそういうイメージがあるよな。俺もあるわ。けど、この件に関しては本当に全てを知ってると思う。理由は単純明解、この件があってから玲は変わったから」


「変わった? 」


「ああ。今の俺らの目の前にいる中村玲だ。俺等は昔の玲を知ってる。だからこそ、ついていくんだろうな。玲に」


俺もその1人と友也は続ける。


「……聞こうとは、思わないの? 」


「玲、聞いても話してくれないから」


即答で少し微笑んだように返ってきた


「だけど、信じてるんだと思う。俺等は、玲がいつか話してくれるのをさ。言ったろ? 傷を舐めあいながらも生きてるんだって、頼ってくれるだろうと言うところは信じてるのさ」


友也は、零香が見た中で1番の良い笑顔を返してくれた。


「……」


「何? 」


「……今まで見てきた中で、1番笑顔だったと思う」


「何それ……まあ、山里には呆れたんだよ。きっと」


「呆れた!? 」


「たぶんだけどな。俺等が見てきた中であれだけ玲に噛みついてきた人は玲の幼馴染みだけだったぜ。それが、ほぼ初対面だったにも関わらずあれだけ威勢良くいくとな。わらけてくるわ」


そう言いながら、コーヒーを啜る。


「いや、だって! 中村くんって暴言吐き放題じゃん! 怒りたくもなるよ」


「ここにいる奴等はならなかったの。というか、あれだけ暴言吐いてる玲って以外と珍しいんじゃないかな」


友也は思い出したように言う


「私は、暴言しか言われてないような気がする」


「いや、そう思ってるだろうけど、山里に対して玲はまだ優しいぞ。何だかんだで投げ出さずに面倒見てるしな」


「いや、私中村くんにはほとんどしゃべらないけど」


「あの時助けてくれたでしょ? あの時も玲多忙だったんだぜ? 博夢から救援信号が来たとかいってるけど、博夢送ってないらしいし」


そう言って、友也は視線をそらした


「あ、目線そらした! 嘘だ! 」


「嘘じゃないって」


「じゃあなんで目線そらしたの! 」


「……ねえ、山里」


返ってきた返答は全く検討違いのものだった


「何? 」


「鬼ごっこって言うんだっけ? 一般人の間では。それシヨウ」


友也の急な変貌に零香は驚く


「どうしたの高瀬くん……? 」


「どうもしてなイヨ。俺が鬼で、山里が逃げる。ルールは簡単。午後6時までに山里が逃げ切れたらクリア。逃げ切れなかったら……ネ? 」


友也は話を聞かず零香を急かす。手にはさっきまで持っていなかったナイフがある


「さあ、逃げ切って? 俺からサ」


零香は返答を聞かず部屋から飛び出した









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