第6話 明察の少年3
次の日、友也が1人でいた。というよりも、澪香を待っていたのだ。友也はこちらに気づくと笑顔を作り、話しかけてきた。
「おはよ、山里」
「う、うん。おはよう。高瀬くん。どうかした? 」
「今日は、山里をつれて職員室まで来いって月浪先生からの伝言貰ったから」
「そ、そうなんだ。わかった!いこうか」
「おう」
そういって、2人で職員室へと向かった。友也は、遠慮なく職員室の扉を開ける
「失礼しまーす。月浪先生ー」
「おう。来たか」
「おはようございます。月浪先生」
「おう。おはよう、山里。学校は慣れてきたか? 」
「昨日、玲と喧嘩したんだって」
澪香が答えるより先に友也が答える。
「玲が? ……まあ、あいつも言い方全力ストレートだしな」
「ですよね。もうちょい言い方優しくても良いのに」
「本当にそれ」
話に出てきた本人が、話についていけない。お互いに察したのかすぐにその話は終わった。
「呼び出しの本題だが、まずはこれ。これから、山里の生徒証の代わりになる端末」
そういって、出てきたのは、ガラケーである。
「これが今のうちの最新式」
流石に、この一言は疑わざるを得ない。思わず聞き返した
「……嘘ですよね? 」
普通に旧式といってもスマホだろう。どう考えてもガラケーが最新機種であるはずがない。
受け取りはするが、耳を疑う話だ。
「マジ、なんなら今度他の奴等に聞いてみると良い。全員ストレート端末って言う電話とメールくらいしか機能無い奴だから」
「そうだよ。だから、俺等は生徒証と学校支給の端末は別物。ガラケーが羨まれる環境だぞ。」
「そもそも、うちにスマートフォンという、地上での最新機種が来るはず無いだろう? 」
当然のように2人は言うが、ガラケーはどう考えても旧式だ。
「まあ、そいつは見ての通り、基本的に電話、メール、カメラ撮影のみ可能。もちろんゲームはできない。あ、その代わり、電子マネーは入ってる。校内しか使えないけど」
「はい……」
「で、もう1つの呼び出し理由がこれ。場所変えるぞ。ちょっと待って」
そういって、机の引き出しから、封筒を取り出す。
「部屋3を取ってる。行くぞ」
「何? 部屋3って……? 」
「ん? その名の通りただの部屋、まあ、イメージ的には机と、椅子が置いてある。ブースのようなものってイメージで良いから」
「打ち合わせみたいだね」
冗談で言ったつもりだった。するととんでもない発言で返ってきた。
「ああ、事前に聞いてたか? その通りだ。今から、山里の初任務についての打ち合わせみたいなもんだぞ」
「……え」
「冗談のつもりだったでしょ? 残念。勘が良いね。山里は」
心を読んだかのように友也にピンポイントでいじられる。それを気にする余裕もなく、澪香は徐々に、冷や汗が流れてくる。予想していたのか、月浪は、うろたえることなく、話を進める
「とりあえず、概要を話すとそんなに難しいものじゃない。誰にでもできる普通の生体調査だ。そんなに気を張らなくて良い 」
「はあ……。って、そこじゃないです。まず任務ってなんですか!? 」
その質問には友也が答えた。
「えとね、いっちゃえば、上層部の雑用係みたいな感じ。任務って言うけど内容は色々ある。まあ、一番理解しやすいところで言うとここは、何でも屋の派遣会社って感じかな? 」
「高瀬ー。ここは会社じゃないぞー。そして、もうついたから話は一旦中断な」
そういって、目の前の扉を開ける。そこには、先日西宮と呼ばれていた少年がいた。
「悪い。待たせたな西宮」
「十分待った。頼んできたのが玲じゃなかったら帰ってた」
「そうか。まあ、これで全員揃った。概要を説明するぞ。その前に、お前ら3人面識は? 」
「友也とはもちろんだけど、その女の子とは知らん。ただ、名前は事前に聞いてる」
「や、山里澪香です。よろしく、お願いします……」
玲ににた高圧的な態度がある。
「知ってる、西宮だ。
「う、うん。西宮くん」
「ん」
すぐに話が続かなくなるのも玲にそっくりである。
「それで良いのか……、まあ、概要を説明する。今回は山里の初任務だ。2人にとってはそこまで難しくもない任務だから基本的にサポートに回ってほしい」
「はーい」
「場所はここ、この前、飛び入りで戦いを見に行っただろ?そこの森の生体調査だ。」
「生体調査……そんな事するんですね」
「ああ。再び危険が現れないとも限らないからな。頻繁にこられるより先に危険があるのか無いのか調査しないと。まあ、基本的に無いはずだからちゃちゃっと行って帰ってこい」
「良かったね、山里。あそこなら、事前に玲がさらっと、調査してるから、ほとんど危険はないと行っても過言ではないよ。上手くいけば夕方には帰ってこれるんじゃないかな」
友也も言葉に、ほっとする澪香
「じゃあ、さっさと行くぞ。俺だって暇じゃない」
「博夢は気が短いよ。どうせ暇じゃないって言っても玲の事で暇じゃないんでしょ」
そういって笑う友也
「うるせえ友也。当たり前だろ。むしろ俺が玲の頼み以外でこんな任務引き受ける分けないだろ」
「確かに。じゃあ山里も早く帰りたいだろう? 早速行こうか」
「う、うん! 」
「お、早速チームプレイは良さそうだ。じゃあ、さくっと行って終わらしてこい。移動は、入ってきた扉と反対の扉が転送扉になってるから。座標はいれてんの?」
「当たり前でしょ? こんなことでいちいち手間取らせるわけにはいかないんでね」
携帯は旧型も良いところなのに、なぜ移動方法は最先端をも凌駕して先に進んでいるのだろうかという疑問を喉元まででかかった。
「……私は、もうつっこまないよ」
「少しは、慣れたみたいで安心したよ。さあ、行ってこい」
「はい! 行ってきます! 」
そういって、3人は扉をくぐる。
目の前にはすでに先日訪れた森の入り口だった。
「す、凄い……」
「過去に、転移系の能力者と分析系の能力者が同時にいたことがあるらしく、その2人が詳細を書き、設計系の能力者が設計して、5年前に、うちの同期が完成させた」
「凄い最近だった!? 」
「玲がないと不便だからって」
「玲が言いそうなセリフ」
マイペースにもほどがあるレベルでここでする話ではない。そんな話をしながら不意に博夢が手を横につきだす。すると、手は見えないところに吸い込まれた。
「な、なんですか。これ……」
「博夢の能力異空間。博夢は異空間をつくって、いろんなものを出し入れできる能力」
「まあ、分かりやすく言えば、アイテムボックスみたいなもの」
「ざっくりしてる」
「能力の名前が某国民的アニメの初期アイテムと同じ名前にされかけたときは全力で止めた」
「あ、流石にあれはしってるんだ」
「流石にね……」
友也は山里に苦笑いで返す。目的のものを見つけ、博夢は手にいくつかの機械を持って帰ってきた。
「これはスキャナーだ。機械を生物の目の前にかざすと、自動で読み取ってくれて集計してくれる。」
「これを使えば自動で図鑑検索してくれるものだと思ってくれれば良いよ」
「え、でも動物って結構いるんじゃ……」
「それも心配ない。スキャンした動物がソロで活動していない限り主に一緒に行動している数を導きだしてくれるという優れもの。目安として、大体20種類ほど会えば、生態系を読み取ってくれるから、俺等の仕事はそれで終わり」
そいういって、機械の操作方法を説明しながら手渡された。
「……もう説明終わった? じゃあ、早く行こうか。日がくれる前に」
「う、うん」
そういって、友也は何気なく澪香を急かした。
「なんかあった? 」
「……別に、何も」
「……そうか」
それだけ会話をすると、3人で森の中へ進んでいった。
「……追うぞ」
「了解」
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