第7話 明察の少年4

「こっちに1匹いたよ」


「了解。スキャンはしたか? 」


「い、今からかな」


「さっさとしないと逃げる可能性あるから」


「う、うん! 」


あれから、実に3時間ほど、3人は順調に調査を進めていく。西宮曰く、このままのペースでいくと今日は夕方には終われるそうだ。友也からも新人が絡んでいる任務でこのペースは早い方だと誉められた


「よし、そろそろ昼休憩を挟むか」


「え、お昼ご飯ってこと? 」


「ああ」


そこで澪香は思い出す。澪香は今日の朝、急に任務だと言われ何も持ってきてすらいないということに


「……私、お昼ご飯無いんだ」


「じゃあ、そこら辺の動物とってきて焼くか」


突然のサバイバル開始を博夢が真顔でいい放つ。


「……マジですか? 」


「冗談だ」


またも真顔で返される。因みに友也は横で肩を震わせている。


「博夢も……冗談いうん、だね」


友也はどうにかして笑いを堪えようとする。


「そうかそうか。高瀬、お前はよっぽど死にたいようだな」


額に血管を浮きだたせながら、博夢はどこからともなく拳銃を取り出す。その物体に澪香は思わず言い放つ


「じゅ、銃刀法違反です!」


「……は? 」


「だいたい、何で拳銃なんか持ってるんですか!? 一般人が持ってて良いものじゃないし、そもそもてに入れられません!! 」


「……おい、お前マジでいってんの? 」


博夢の反応があり得ないという反応をしている。澪香もここでは引き下がらないという反応をしているし友也に至っては雰囲気を壊さないように必死に笑いをこらえている


「ほ、本当に言っています!」


「……知ってるよ。銃刀法違反。だが、一般人に見られなきゃ俺等は適用になら無い」


「い、一般人って、西宮くんも一般人です! もちろん私も、高瀬くんも!」


その一言に2人は顔を曇らせ次の言葉がでなかった。友也は、肩の震えが一瞬で収まった。博夢は、1度深呼吸をし言葉を出す。


「なあ、お前」


「山里です。山里澪香」


「知ってるわ。……じゃあ山里。さっきも言ったけどさ、お前さマジでそれいってんの? 」


さっきの反応とは別で、真剣な表情になっている


「ほ、本当に言っています」


「……ああ、そうか。マジの一般人は20才になるまで俺等の事知らないんだっけ? 」


博夢はどこか納得したような顔になる。そして、話は長くなると前置きをして木の根元に座るよう促す。澪香は不服ながらもその指示にしたがう。博夢は対面する木にもたれかかる


「良いか。俺等の上層部ってのはを指すんだ。俺等は政府の決定には絶対服従を誓わされている。この拳銃もその服従の恩恵の1つさ、任務って一口に言っても様々でな今回みたいな調査があれば、災害などの緊急時のレスキューや復興の補助。そして、俺等の任務にはいるんだよ」


嘘のような事実が澪香の耳に飛び込んだ。だが、博夢の目は真剣そのものでどう見ても、嘘をついているような目じゃない


「そんな、国は戦争をしないって明言してますよね」


「そんなもん、ばれなきゃ犯罪じゃない方式と一緒だ。そもそも政府は、国は、世界は、俺等を人と思っていないから」


「……人じゃ、ないですか。私も、高瀬くんも、西宮くんも、……先生たちも、皆人じゃないですか」


「……ああ、そうだよ。俺等は人間だ。正真正銘、母親と父親がいて、特に何事もなく健康的に生まれてきた人間だよ。ただ違うのは、能力の有無。たったそれだけの事で、俺等はすでに一般人では、無い」


ここまで博夢たちにとっての事実を言われたら、澪香はもう屁理屈で返すしか思い付かなかった


「人間じゃなかったら、なんだって言うんですか」


今までで、一番重い言葉で返ってきた


「……化け物だよ。俺等は全員、人間とはもう、見なされていない。ただの面倒事なんかを押し付けられるためだけにいる、ただの大人達の道具さ」


「……」


すでに諦めたような目の博夢が、目の前にいる。澪香は、博夢とも、友也とも目を合わせられない。それを察したのか、博夢はもう一度深呼吸をし、話を止める


「悪いな、あんたに、山里にする話じゃなかったよ。当日言われるのは聞いてたから、代わりに、購買で朝適当に買っといた。味は保証するから食え」


そういって、またどこからともなく、おにぎりや、パンなどが入った袋を取り出し、友也に渡す


「俺は、先生に中間報告しとくから、先食っとけ」


「……了解、ありがと」


そういって、友也は受けとる。受け取ったのを確認し、博夢は連絡を取るため、澪香たちのもとから離れた。


「……山里、なんか食べたいもの、ある? 」


友也は、遠慮がちに聞いてきた


「……いらない」


「そういわずにさ、博夢が奢ってくれるの、珍しいんだぜ。しかも購買。間違いなく当たりだって、俺のおすすめは」


「いらないって、いってるじゃん」


「……山里」


「何で? 確かに。昨日、皆が何かしら辛い過去を持ってるって聞いた。能力を持ってたからって、中村くんからも聞いた。俺等をいつでも処分できるようにって、……嘘だと思った。その時、冗談だと思った」


「……うそじゃ、無いよ。玲の言ったことは、本当」


「なんで? 何で皆、そんな簡単に言えるの? 私たち、まだ、17歳だよ? やりたいこといっぱい、できることいっぱいの、高校生なんだよ? なんで、そんな簡単に、そんなこと受け入れられるの」


友也は、言葉がでなかった。本当だからだ。高校生なら、できるようになったことも増えるし、何でもできるようになってくるというのが普通だろうし、実際、仕事なんかしてても、アルバイト程度の人が多い

人が多い。誰しもが、死ぬかもしれないということを想像しにくいのが普通だろう。だが、ここでの普通に澪香の持つ常識は通用しない。


「……俺等はね、基本全員が、暗い過去を持ってんの。誰にも言えない、言いたくない過去が」


「それは、昨日も聞いた」


「だけどね、ここの現状を俺らが受け入れられるのは、俺らが、簡単に言えるのは、誰かがいるから」


「誰かって、誰」


「それは、人それぞれかな」


そういって、友也は話を続ける。


「まあ、よく言えば、支え合い。悪く言えば、傷のなめあい。錯覚するんだよね、ここにいると、誰しもが、にたような境遇だって、それが俺たちの、私たちの普通だって」


「そんなの、普通じゃない」


「確かにね、山里からすれば、普通じゃないのかもしれない」


「どこにいったって、普通じゃないよ」


「これが俺等の、普通なの。とりあえず、長月に会いたいでしょ? 」


「……まあ、朝会ってないし」


「じゃあとりあえず、ここから生きて帰らなきゃね」


そういって、急に話題を転換してきた友也にびっくりいして顔を上げると、友也が屈伸運動をしている



「……何を、してるの? 」


「何って、屈伸運動」


「真顔で言わないで! 見たらわかるよ。してる意味がわからないから、いってるんだよ!! 」


「そっか、やっぱり山里は、状況は体で覚えるタイプだね」


澪香は友也のめんどくさそうな表情は始めてみる


「え、高瀬くん? 」


「何?」


そういって、友也はゆっくりと澪香の元へ近づく


「た、高瀬くん。急に怖いよ? 」


「あそ。俺には関係ない。今日の俺の仕事は、あんたに傷一つつけないで学校に帰すことだからさ」


そういって、友也は澪香を自分の方へ引っ張る。澪香の驚きはその後すぐに聞こえた衝撃音に移り変わった


「出てきたら? 今の、渾身の一発だったんじゃない? 」


「え?え?」


急な友也の豹変と、先ほどまでいたところに、銃弾痕があって、澪香の脳は処理しきれていない


「どうやって、見抜いた? 君とは初対面なんだけどな。私の初見殺しが聞かないなんて」


「あんたの質問に答える義務はない。てわけで山里。死にたくなけりゃ敵からの攻撃を避け続けるぞ」


「え、はい!! 」


「私からは、逃げられないわ!」


「さあ、どうだろうな」


そういって、混乱する澪香をよそに、友也は怪しい笑みを浮かべた。















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