第3話 ここでの日常
友也のことを気になったが、そのまま放課後になる。先生ならなにか知っているだろうと、澪香は月浪に質問する。
「先生。高瀬君が帰ってきてないんですけど……」
先生は間髪いれずに答える。
「了解。まあ、校内のどっかにはいるだろ。それよりも山里。能力特別科がどういうところか分かったか? 」
「……いえ。先生みたいに、常識離れした能力があるということかと……」
「やっぱりか……」
ツキナミはすこし考えると、言葉を続ける。
「じゃあ、転科早々で、時間はないと思うが、今日の放課後の時間を説明としてくれ」
「は、はい。」
返事をすると、月浪に促され、別の教室の様なところにつく。だが、この部屋の扉は、普通の教室とは異なり、頑丈そうな作りで鉄製なことが、一見してまるわかりである。とてもここが教室だと思えなかった。
月浪は扉の横にあるインターホンを押した。
すぐに、扉は開けられ、二人は中へと進んで行く。
進んでいくと、多くのモニターや機材の前に、数名の生徒がいた。そのうちの一人に月浪は話しかける。
「悪いな。野々原。急に来て」
「……いえ。それより、新しい、同級生ですか? 後ろの女子」
彼は見向きもせず、月浪に訪ねる。
「ああ。名前は聞いてるだろ? 山里、こいつは1組の
怜央はキーボードをずっといじっている。それを月浪はたいしてとがめることもなく、澪香に話を続ける。
「実際モニターを見た方が、早いな。モニターのそうだな。一番右上の映像を見てくれ」
澪香は月浪の指差すモニターを見る。
「先生。……これは、フィクションですよね……」
澪香が見たモニターにはあり得ない光景が写っている。今朝話した玲が画面内で戦っているのだ。RPGさながらのモンスターを相手にして、尚且つ玲自身も、RPGで使われるような能力を使っている。
「いや、これは現実に行われている。本当のものだよ」
澪香は言葉を失った。モニター越しの光景が現実のものと思えなかった。モンスターなんかは全てフィクションの世界のものだし、今朝見た、月浪の手の事だって、マジックのネタだと思っていた。
「俺の能力だけだと、やっぱり信じてもらえないと思ってな。多くの能力を見ると、信じざるを得ない状況になると思ってな。ここにつれてきた。野々原、今回の敵はどういう敵だ? 」
「今、中村、西宮、
「成る程。じゃあ、現地に行っても問題ないな。山里にも、説明しなけりゃならないし、現地の方が、何かと分かってくれるだろう。座標は? 」
「モニターの右端みてください。表示されてますから入り口は、玲が作ってくれてるので、恐らく問題はないかと」
「了解。山里。ちょっと、手かして」
そう言いながら、澪香の右手をとる。
’
「へ、え!? 」
澪香の視界は、さっきまでモニターが映っていたのに、今は、モニターで見た竜のようなモンスターが映っていた。さらに、多くの銃声や、他の音も聞こえる
「え、嘘……」
思わずその場にへたりこむ。二人が来たことに気づいた玲は、一時戦線を離脱してこちらに来た。
「なぜ山里澪香がここに」
「状況を説明するのはこれが手っ取り早いと思ってな
」
「俺はあなたたちの護衛までしている暇はないんですが」
「邪魔はしないさ。山里には実際この光景を見せた方が早いと思ってな」
「もうじき終わりますよ。ちょっと遅かった気がしますが、まあ好きにしてください。前田。行けるか? 」
玲と同じく、最前線から、一歩離れたところにいる少年は答える。
「準備完了。いつでも行けるよ」
「了解。西宮! 相手を動かさないよう前田の援護射撃を」
「了解」
西宮と呼ばれた少年はどこからともなく多くの銃などを取りだし、攻撃を続ける。モンスターの回りには、どこからともなく現れた巨大な植物が囲った。
「ブロック、対象を中心に、10メートル四方」
少年がそう呟くと、急にブロックが現れて10メートル四方を囲った。モンスターはその中から出られなくなり、暴れている。
「範囲縮小」
再び、一言呟くと、彼の言う通りに、ブロックが縮小していった。そのうち、中で身動きが取れなくなっていったモンスターは、消滅した。
「嘘……」
澪香は思わず呟いた。玲はその言葉を拾い続ける。
「本当だ。今朝言ったはずだぞ。ここは生き地獄だとな。ここではこんなことは日常茶飯事だ。一つ一つに胸を痛めていたらきりがないぞ。いつか自分の身を滅ぼさないように注意するんだな」
それだけ言うと玲はこの件の事後処理を始めていった。その後、澪香はどうやって帰ったか覚えていない。気づくと、寮の自分の部屋であろう所にいた。
寮に備え付けられてある机の上には、長月からのメモがあった。その内容を見る余裕もなく。澪香はベットに倒れ込んだ。
一方の学校では、事後処理を終えた玲が帰ってきた。教室で書類を書きながら
「友也。教室でどんな印象を受けた? 」
言われると、まもなく柱の影から、友也は出てきた。
「ばれてたか。どうって、
「そうか。」
「本当に、あの子は能力を持ってんの? 」
友也は思わず質問をする
「見てればわかるさ。じゃあ、俺は書類提出あるから」
そう言って、玲は職員室へと向かう。
「珍しく玲に逃げられた…」
そういいながら、友也の口角は上がっていた。
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