第4話 『実力』
コロッセオ闘技大会。その100年目の開催となる今大会は、観客も選手たちも例年よりも熱気を帯びていた。
「すごい歓声と熱気ですね」
「だよなぁ、それに他の選手たちも随分と気合入ってるな」
魔王の控室は大部屋になっていて、15名ほどの選手が詰められていた。
大柄のオークや鎧を着こんだスケルトン、大鎌を持ったネクロマンサーなどの選手がいた。
「魔王様は大丈夫なんですか?」
「ん?なにが?」
「まぁ…いつも通りですか…」
スライムの問いかけに軽く頭を傾げる魔王であった。そこへヴァンパイアとグールがやってきた。
「魔王様ー!控室ここだったんだー、探しちゃった」
「あれ、選手とコーチ登録者以外でもここ来れるのか」
「ちょっとだけって言って入れてもらっちゃった」
「はいこれ、お守り!あたしとグールから」
そう言うと小さな長方形のお守りを手渡される。
「まさかこれ、アレ入ってるんじゃ…!?」
「あ、中身開けたら殺すから」
ヴァンパイアは満面の笑みでそう言った。
「あっはい。……ともかくありがとう」
「じゃあ、あたしらは観客席にいるからねー、頑張ってよね。ばいばーい」
「ファイトだよ~魔王様~!」
手を振ってヴァンパイアたちは控室から出て行った。
それからしばらくすると係員が入ってきてルールと注意事項の説明を始めた。
魔法以外何でもあり。相手が死ぬか動けなくなる又は降参するもしくは、25メートル四方のリング外に出されるリングアウトするまで戦い、
勝者を決める。武器と防具の持ち込みは自由。回復薬などの使用も認められる。
「ではまず1回戦から…」
今大会はトーナメント方式で、決勝までは6回戦となる。選手たちはAからDブロックまでの4ブロックに分かれ
5回勝ち抜いたAとB、CとDブロックの勝者同士が準決勝を行い、その勝者で決勝が行われる。
なお、特別招待選手であるヴァラモスは決勝の勝者と戦うことになる。
「しかし、ヴァラモスってやつはずるいですねー。最初から決勝行けるの決まってるようなもんじゃないですか」
「強いんだし仕方ないんじゃね?」
「魔王様はてっきりずるいって賛同してくれるかと思ったんですけどね」
「うん…やっぱあいつさ、どっかで見たことある気がするんだよな」
「あれ、そうなんですか?」
「うーーん…どうにも思い出せないんだよなあ…」
「あ、魔王様呼ばれてますよ」
「お、そっか。んじゃいってくるわ」
「頑張ってください!」
魔王は存外強かった。1回戦は鎧を着こんだスケルトン。
魔王はヴォーパルソードを鞘から引き抜き振った瞬間、勝負はついていた。
2回戦・3回戦・4回戦と危なげなく勝ち進んだ魔王だったが、Aブロック5回戦の相手は相当な使い手だった。
人間のアサシン。本来は暗殺などを得意とし、またその素早い身のこなしから繰り出す様々なナイフ技は相当なものだった。
「あいつやばそう」
「魔王様、気を付けてください。あの刃には毒も塗ってあるらしいです」
「マジかよ」
「Aブロック5回戦をはじめる。両者、入場!」
審判が選手たちを呼ぶ。
「よっしゃやるか」
魔王は両頬をパンと叩き、気を奮い立たせた。
そしてアサシンと対峙する。
「両者、始め!」
開始の合図とともにアサシンが視界から消える。
「なっ…どこいった!?」
辺りを見回すが姿が見当たらない。
「遅いな」
そうアサシンが答えると、アサシンは魔王の背後に立っており首元にはナイフが突きつけられていた。
「じゃあな」
「くっ…」
客席からヴァンパイアたちの声援が聞こえてきた。
「がんばってー!負けたらブランドバック買ってもらうからね!」
「無理だっての!」
魔王は瞬時に屈み、背後に足払いを繰り出す。しかしアサシンは飛んでそれを避けた。
「よっし!」
その時、ヴォーパルソードを引き抜き体を半回転させ空中を一閃した。
「なにっ!ぐはぁっ!!」
「空中にいる間ならその素早さも生きないだろうってね」
そのままアサシンは地面に倒れ込んだ。
「アサシン戦闘不能!そこまで!」
「ふぅ…」
控室に戻った魔王にスライムが声をかける。
「お疲れ様です、魔王様。さっきは一瞬ヒヤッとしましたがさすがですね」
「まぁ、空中を蹴って移動なんてこの世界線にはないからね」
「ワープとかはあるのに」
「まぁあれは魔法だし。そこは、ね」
それから戦いが進みBからDまでのブロックの勝者が決まった。
Bブロックの勝者は格闘家。筋骨隆々のボディを武器に準決勝まで危なげない戦いで勝ち上がってきた。
Cブロックの勝者はミノタウロス。身の丈の倍以上はある大きな斧を振り回すこれまたパワーファイター。
Dブロックの勝者は黒ずくめの鎧を纏った騎士のような人物。剣術で無難に勝ち上がってきた。
しかし底知れない力を秘めてそう。な風貌である。
「6回戦の相手はどうやらあの格闘家らしいですね」
その格闘家は5回戦った後とは思えないほど筋トレしていた。
「はっ!はっ!はっ!」
ベンチプレスの重りには200㎏と書いてあった。
「に、200キロ…」
「超やばそうですね…」
視線に気づき、格闘家はベンチプレスを置き、こちらへ歩いてきた。
「はっはっはっはっは!元気ですかー!!!」
「は、はぁ(大胸筋が歩いてる)」
「なんだー!元気がないぞー!!そんなときは一緒に筋トレして元気になろうではないか!!!」
「いや、遠慮しときます」
「なに、遠慮なんかしなくていいんだぞ!!はい!サイドチェストォォォォォォォォ!!」
その時係員が呼びに来た。
「準決勝の準備ができました。AブロックとBブロックの勝者は入場してください」
「お、どうやらお呼びがかかったらしいな。よろしくな兄ちゃん!はっはっはっはっ!」
「あ、ああ…」
――――準決勝が幕を開ける。
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