イデ亜ゲヱム

__________さあ、盤に上がれ。

我々は、ジョーカーになれるか。


。*.。*.。*


一組、二組、そうしてまたカードを急かしていく。

捲ってみなければ分からないのは、同じせいふくの裏に隠れているのは、本当にマークと数字だけ?


「同じカードをペアにしていくんだよ」

そういうルールなんだ、と君は言った。


_________本当にそう?


何の疑いもなく合わせられたペアは、何も疑われずペアだと認識されていく。誰も彼もがそれが真髄であると


違うカードもやがて同じカードへと染まり、盤上から逃げるためだけに嘘をつく。

蹴落とす。汚れる。見失う。


「君はペアのもう片方は探さないの?」

探さないと答えれば、憐れみ、或いは指を差して笑う。時にはカードを千切る。


________それでいい。


結局のところ、フィクションのような美しい勝利などは、この制服を着る前から消え失せている。解っている。


どうせ、どうせ、あれはただの虚像で、仮面で、いつかきっと牙を剥く。

裏返してみればそれはただの泥沼で、白い百合などとうの昔に枯れているのだ。


高かった君の声も、曇りを知らない笑顔も、もう此処には無い。

この何列もカードが並んだ部屋ボードからは、逃れられない?



_________いや、違う。



もう一枚______あわよくばもう二枚、カードを加えればいい。

黒い服を着て此方を見ている、真っ白なジョーカーを。


もういっそ君と私の二人でジョーカーになろう。

マークと数字で作られた嘘塗れの心理戦じゃなくて、ずっと続いてきた欲で溢れた攻防戦じゃなくて、独占も知識も捨てたようなジョーカーでいよう。


_______あれ、ジョーカーだって、道化師?

それにこの考えだって、結局あのカード達と同じで_______


違う、違うよ。解ってるよ。君だってきっと今は汚れていて、百合の咲いている時間はとっくに過ぎ去ってるんでしょう。解ってる。


でも、もう少し長く、その花の白さを信じていたかったなあ、なんて。



_______ああ、やっぱりどうでもよくなっちゃった。ジョーカーなんて、私一人でいいや。


この嫌悪感から逃げるために道化師になって、金輪際君なんて、君なんて_____________





_____________この仮面を被って、忘れてしまおう。

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