「共通点」



 A市近郊に、一夜にして大量の地上絵が描かれた。


 事態を重く見た自治体は、調査チームを派遣。


 専門家たちはヘリをチャーターし、現地へ急行した。


「何と巨大な……!」


 ヘリから平野を見下ろし、専門家は驚嘆の声を上げる。


 昨日までは何もなかったはずのそこに、見事な絵が描かれていた。


 それも一つや二つではない。巨大な地上絵が、所狭しに、ぎっしりと……。


「あれは……何の絵でしょうか?」

「ピーマン、あるいはパプリカのように見えるな」


 助手の疑問に、専門家は答える。地上に白線で描かれた絵。それは野菜をかたどっているように見えた。


「あちらは、ナス、でしょうか?」

「こっちはゴツゴツしているな……ジャガイモのようだ」

「それに、トマトの絵もありますね!」


 野菜、野菜、野菜。


 野菜であることは確かだが、方向も不揃いで、ただ乱雑に図柄が並べられている印象。


「いったい何者なんだ、これを描いたのは」

「とても人間業とは思えませんね」

「何かのメッセージでしょうか? 犯人が誰であれ」

「ううむ……しかし、規則性が見えてこないな……」


 助手たちとともに、専門家は首をひねる。


 だがそのとき、黙ってヘリを操縦していたパイロットが「あっ」と声を上げた。


「ん? どうしたのかね?」

「い、いえ……」

「何かに気づいたのなら、遠慮なく言ってくれたまえ。我々専門家だけではなく、様々な視点から考察したいのだ」


 専門家の熱心な言葉に、パイロットはしばし迷ってから、


「ピーマン、ナス、ジャガイモ、トマト……これって、もしかして……」


 思い切って、口に出す。













「ナス科の地上絵……」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る