出迎え


 放心状態のアンジェリカ……

 すぐにルクレツィアが、ガウンなどを持って来ます。

「アンジェリカ、早くこれを!」


 そこでアンジェリカは、初めて自分の格好に気づき……

 凄い悲鳴を上げました……アンジェリカは寝間着姿だったのです……


 しかも胸が片方、ポロンと出ています。

 皆にすっかり見られてしまったようです。


 しょげかえって、部屋に閉じこもってしまったアンジェリカ……

 三人のお友達が慰めています……


「ねぇアンジェリカ、胸を見られたことは、恥ずかしいかも知れないけど、あの黒の巫女様でさえ、蛮族との動乱の時、あられもない姿で戦われたと聞いています。」


「巫女様はアンジェリカの事、褒めてくださっても、怒こられることは無いはずです、なんなら皆で事情を説明いたしますから、ね、そんなに落ち込まないの。」


「……」


 たしかにその言葉は当たっていました。

 ゴールデン・ユーコン号が、救助した乗客を下ろすために、近くの港へ入り、乗客が降りて行きます。

 皆が降りて、プリンセスたちが降り始めると、後ろに立っていたハンスが、アンジェリカの肩をたたき、ある方向を指さしました。


 そこには他を圧するほどの、威厳を漂わせた女が一人立っていました。

 その女はアンジェリカを見つけると、抱きしめてくれました。そして、

「良くやりましたね、とにかく休養しなさいね。」

 と、いってくれます。


「アウセクリス様……私……」

「聞いています、気にすることはありません。」

「胸など見られたからといって、貴女の行為を、とやかくいうものはいませんし、私がいわせません。」

「お友達が助けてくれました……」


「そちらの方たちが、そうですか?」

「はい。」


 ここでアウセクリスは、凡そエラムでは考えられない行動を取りました。

「アンジェリカさんの為、人々の為に、よく力を貸して下さいましたね、ありがとうございます。」

 と云って、三人に丁寧に頭を下げたのです。


 そして、この後、ハンスたちをねぎらっていた、アウセクリスではありましたが、再び戻ってきて、

「一度この御礼に、皆さんをお茶に、ご招待したいのですが、構いませんか?」


「招待をお受けくださる、では明日の昼過ぎ、奉仕の魔女団の使いを差し向けますので、イーゼルでお会いいたしましょう。」

 と、いってくれます。


「アンジェリカ!どうしよう!巫女様にお茶に招待されたわ……」

 と、トスカが上ずった声で言います。


「それにしても巫女様って……素敵……ドキドキしたわ。」

 と、ルクレツィアも言います。

「ねぇ、アンジェリカ……私もお側に仕えてもいいかしら……」

 と、アルフォンシーナがその様に言うと、皆、私もと口を揃えます。


 次の日の昼過ぎ、奉仕の魔女団の使いが、各々のところへやって来て、イーゼルの黒の巫女の部屋へ、案内してくれました。

 黒の巫女は待っていました。

 自らお菓子を作ってくれていたようです。


「つまらないものですが、チョコレートケーキというものです、美味しいですよ。」

 プリンセスたちは、陶酔してしまいました。

 その後、ワイワイと談笑は弾みます。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る