ナンパされて難破した
「ギャフンといわせたいわね!」
アンジェリカが云うと、ルクレツィアが、
「いい考えが有るの、皆、協力する?」
「するする、女の敵を退治するなら!」
で作戦会議などを四人は始めますが、一番積極的なのがアルフォンシーナ……この美貌の若い未亡人は意外にお茶目でした。
ルクレツィアが、
「まずね、あの色男にバラバラに四人でひっかかるのよ」
「でね、まず私がこういうわ、『本当に私を一番目の妻にしてくれるのね、お父様に手紙を書いたわ、次の停泊地で書簡を早馬で送るわ』ってね」
ふむふむ……他の三人は真剣に聞いています。
「ここまではおめでたい話、ルクレツィアのお父様、テッサリア国王の耳に入れるというのね」
「そう、次にトスカが同じようにいうのよ、するとどうなると思う?コムネノス国王の耳に入れば……」
「戦争にはならないでしょうが、明るみに出ればあの女の敵は困るでしょうね」
「でもルクレツィアとトスカを妻にして妥協……この当たりで落ち着くのでは?」
「そうなるわ、でね、ここからよ、次にアルフォンシーナの出番なのよ」
アルフォンシーナがクスクス笑い始めました、
「ルクレツィア、貴女、戦略家ね、軍師になれるわ、私も同じ事をいえばいいのでしょう?」
「そう、アルフォンシーナを口説き、ことがシルバニア国王の耳に入れば、ハイドリア連合王国のクルト宰相の耳に入るわ」
「なんせアルフォンシーナを巫女様に献上して、ハイドリアの心象を良くしようと企んでいる宰相ですからね」
「激怒するでしょうね……ベニート、恥だけではすまなくなるわね……」
「でもこれなら、穏便に無しということで終わるわね……ベニート……社会的には抹殺されるわね……」
「最後にアンジェリカの出番ね……同じ事を黒の巫女様にいうのよ、私をベニートに下賜して下さいって……」
四人はここでどうなるか、完全に理解して笑いが止まらなくなりました……
もし全てが黒の巫女の耳に入り、四股をかけたことが知られれば、黒の巫女の激怒は必須、どうなったか過去に例があります……
まずアマート侯爵家は潰れるでしょう、しかもベニート・アマートの名は、エラム全土に公表されます。
黒の巫女の女官の一人をたぶらかそうとした男と……
女官の名前は公表されませんし、多少の謹慎ですみます……
ただ名誉を重んじるベニート・アマートは面子丸潰れ、しかも激怒するでしょうテッサリア国王に何をされるかわかりません……
間違い無しに死ぬことになりますが、まともに死ねるかどうか……
「あの女たらしも馬鹿では無いのでしょうから、こうなったら、どちらが困ったことになるか理解できるでしょうね……」
「わびを入れてくるのは必定、どんなことをしてもね」
「懲りるでしょうね、この舞踏会で、しかも公衆の面前で、女の私たちにわびをいれる姿を晒さねばならぬのですから」
此の様な作戦を短時間で決め、実行したのですから、四人のプリンセスもなかなかの女たちでしょう。
結構なお色気と若い媚を振りまいてね。
ベニート・アマートは、コロっと引っかかったのです。
で結果は……
ベニート・アマートは舞踏会の最中、四人がたむろするテーブルにやって来て、
「……失礼をお詫び致します……以後、気をつけますので……ご内密にして頂けませんか……」
と、歯ぎしりしそうな顔で云いました。
内心ではわかっているのです……嵌められたということを……しかも相手の四人の女はほぼ無傷ですみますが、アマート侯爵家は断絶、自身には間違い無しに死が待っています……
己の愚かさゆえに家名を断絶させるわけにはいかない……
不名誉この上ない事でも、ここは女たちにわびをいれて、無しにしなければならぬのです。
アンジェリカが、
「ベニート様、あまり女を泣かせないでくださいね」
渋々と「わかりました」と云うしかない、ベニート・アマートでした。
次の日、船が停泊したのを待って、ベニート・アマートは船を降りました。
「女悪魔どもめ……」
なんて呟きながら。
そしてその日の夕刻、プリンセス・ユーコン号は激しく揺れて……座礁してしまったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます