プリンセスだらけ?
「あら、アンジェリカ様、こんなところで奇遇ですね」
これまたえらく綺麗な少女が声をかけてきました。
少しばかりアンジェリカよりも年下に見えるこの少女は、とてつもなく健康そうです。
「ルクレツィア!貴女なぜこんなところに?」
「パリスで南北フィン産業博覧会が開かれるでしょう?」
「それで私も売り子として駆り出されるのよ」
南北フィン産業博覧会……
二つにわかれて内戦を展開した国々の復興のために、毎年、両国の首都で交互に催されるイベントです。
「あら、私と同じだわ?」と、トスカが云います。
「こちらは?」
と、ルクレツィアが聞きますので、アンジェリカは、
「ルクレツィア、こちらはコムネノス王国のトスカ王女、いまお友達になったの」
「トスカ、こちらはテッサリア王国のルクレツィア王女、私の古くからの親友よ」
トスカが、
「狡いわ、アンジェリカ、私は貴女の事は名前しか知らないのよ」
ルクレツィアが、
「アンジェリカ様、何もいわなかったの?お友達に失礼ではありませんか?なら私が紹介しましょう」
「こちらはアンジェリカ様、エピロス王族でパリス連合王国宰相のお孫さん、そして黒の巫女様の寵妃の一人、側女の位を頂いている方よ」
「えっ、巫女様の!」
「ごめんなさいね……私、寵妃なのであまり此れ見よがしに、こんなところにいるのは憚れるので……」
「チョーカーつけているの?」
「見せてあげるわ」
で、たちまち意気投合したのか、ルクレツィアも親友の輪などに入ります。
こうなると踊りそっちのけで、ぺちゃくちゃとおしゃべりに余念がありません。
そうこうしていると、今度はトスカが知り合いを見つけました。
「アルフォンシーナ公爵夫人がいらっしゃるわ、私チョット挨拶してこなくっちゃ」
「すこし待っていてね、帰っちゃダメよ」
アルフォンシーナ公爵夫人と呼ばれた方は、アンジェリカより少し年上に見えます。
「アルフォンシーナ公爵夫人?」
「知っているの?」
「確かシルバニア国王の一番下の姫様、この間、公爵に嫁がれたのだけど、すぐに夫が亡くなられ、相続者からハイドリア連合王国のクルト宰相が購入されたと聞いているわ……」
と、アンジェリカが云います。
「それって献上されるということでしょう……たしかにあの方……お綺麗だわ……巫女様の寵妃にお似合いね……」
そんな話を二人がしていると、なんとトスカがアルフォンシーナ公爵夫人を連れてきました。
若いといえど人の妻になり、そして未亡人……落ち着いた雰囲気が漂います。
「トスカさんのお友達とか……アルフォンシーナといいます」
「テッサリアのルクレツィアです、初めてお目にかかります」
「そちらの方は?」
アンジェリカは沈黙しています、ライバルと認識したのです。
慌ててトスカが、
「この方はお友達のアンジェリカ王女、アンジェリカ、アルフォンシーナさんは、私にとって姉のような方なの……」
トスカにその様にいわれては、アンジェリカも挨拶しない訳にはいきません。
「アンジェリカです、不躾な態度を陳謝致します」
「いいえ……お名前をお聞きしたので、アンジェリカさんのお気持ちは理解出来ます」
「私も女ですからね、愛する方を寝取る相手と口はききたくないはず」
「でもご安心下さい、私はトスカさんのお友達、そして貴女もトスカさんのお友達、私はお友達が望まれぬことは決していたしません」
「聞けば黒の巫女様は、望まぬ相手は抱かれないと伺っています」
ニコッと笑って、アルフォンシーナ公爵夫人はこういったのです。
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