やはり趣味はやめられない……


「まずい!ダフネ、まずいぞ!これは」

「ビクトリアにいわれたくないわ!これは何よ!この焦げたものは!」


「二人共、変わらないではありませんか?」

「……」


「そうね、たしかにアテネのは見てくれは悪いけど、それなりに食べられますね」

 アテネさん、ヴィーナスにそういわれ嬉しそうです。


 こうして、まぁ食べられるような物を作る教室は、成果をあげたのです。


 翌日、続々とお客様がやってきます。

 朝からヴィーナスは、忙しそうにクッキーを焼き、ドーナッツをあげ、サンドイッチを作り、とにかく色々なものを無差別に作っています。

「統一がとれていませんが、まぁいいでしょう、色々な人が来るでしょうから」


 ティーパーティは、ダフネのお家の中庭で、華々しく始まりました。

「本日はお呼ばれに頂き、ありがとう……ございますます……」

 なれぬ挨拶をしている、ご近所の奥さんたち。


 結局は地が出たのか、なかなかお上品ではないお茶会……

 そのような中で、ダフネはヴィーナスとお話をしています。


「ねえ、ダフネさん……あの歌は、世界を救えるほどの歌です」

「エラムは『にがり草』で、かなりの食料は増産できますが、その歌の魔力で作られた肥料があれば……」

「でもね、誰彼に授けてはいけないでしょうね……人はすぐに楽を求めますからね」


「たしかにそうですね……」

「でも、少しだけなら……ね、ここ一番の時、凶作が予想されるとき、とても貧しい土地に住む人々の為とか、大賢者の恩恵として、授ければと思うのです」


 さらにヴィーナスはいいました。

「確かに毒薬料理なのでしょう……とにかく猛毒も薬になるのですよ」


 その後、確かにヴィーナスがいった通り、肥料として見るならば、これは大変な代物と判明しました……

 酵素の力と、ヴィーナスはいいましたが、作物がとても巨大化するのです……


 お化け茄子や、お化けカボチャのオンパレード……小麦も巨大な穂が頭を垂れています。

 ただ味はとても大味……


 ダフネはやっと料理の意味、力がわかったような気がしました。

 食材の味を活かすのは当然、しかし食材を工夫して美味しくする……


 そう、治世も……

 大賢者ダフネの料理……それは人々、そして組織……組み合わせて美味しく豊かにする手腕……


 といいたいが、やはり趣味はやめられない……

 ただこのごろは『まずい料理』へと格が上がったようで、ジジが次の様に云いました。


「ダフネ様、中途半端は行けませんよ、やはり毒薬を生産して下さい」

「お仕置き薬がなくては、治安がゆるぎます!」


 いまいち救われぬ、ダフネさんではあります。


    FIN


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