ダフネさんは人気者


 何はともあれ、三人はえらくたくさんの食材を無駄にし、毒薬を大量生産し、そして悪臭を四方に撒き散らした……


「おぉー、ダフネ様がお帰りになっているぞ」

「おやまあ、相変わらず、お料理は下手でいらっしゃる」

「今日はいつになく、気合が入っているな……」

「ダフネ様みたいな、えらく綺麗な女の人がいっしょにいたわ」


「ダフネ様ぐらい?そりゃあ愛人の方々じゃないのか?」

 エラムの主権者である黒の巫女ヴィーナスの側に侍る美女たち。

 エラムの住人は、畏敬の念も込めて『愛人』と呼んでいる。


 別名、『鍵の所有者』と呼ばれている、黒の巫女ヴィーナスに奉仕する女たちではあるが、主を守るために絶大な戦闘力を身につけている。


「ちょっくら、ご挨拶に行ってくるか?」

「あんた、綺麗な女の人を見に行きたいの!」

 女どもが、亭主に小言を云っています。

 男性上位のエラムといえど、奥さんは権力を握っているようです。


「あんたはここにいるの!私がご挨拶に行ってくる」

 というわけで、近隣の奥さん連中がぞろぞろとやってきます。


「ダフネ様、おかえりのようで、ご飯はまだでしょう、これをお食べ下さい」

 ささやかな芋の煮付け、硬いパン、粗末ながら手作りの料理が並びます。


「おやまあ、本当にお綺麗な方々が……内の宿六が鼻の下を伸ばすわけね」

 ビクトリアが、

「世辞でも嬉しいな!」


「やっぱりダフネ様は人望がある、ね、ビクトリアさん」

 アテネが云いました。


「でもダフネに差し入れしてくれて、助かった……とにかくこれで腹が満たせる」

「失礼ね!」


「まだ、うまく作れないようですね」

 突然、またひとり、浮き上がって来ました。


「おゃ、ギャラリーが大勢いらっしゃいますね……どなた?」

「巫女様、こちらは私が仲良くさせていただいているご近所の方々、皆さん、ご挨拶を、黒の巫女様です」


「えっ、これは大変失礼しました」

 思わず平伏する奥さんたち……


 ヴィーナスが慌てて、

「お立ち下さい、ダフネさんのお友達は私のお友達でもあります。」

「いえ、私たちはダフネ様のお料理を、頂きに来ただけですから。」


 ヴィーナスが慌てて、

「お立ち下さい、ダフネさんのお友達は私のお友達でもあります」

「いえ、私たちはダフネ様のお料理を、頂きに来ただけですから」


 これにはヴィーナスが驚いています、

「あの料理をですか?」

「はい……ダフネ様の料理は畑に撒くと虫の駆除剤、殺虫剤になるのです」

 ビクトリアが家が揺れるほど笑いました。


「ひっ……笑いすぎて腹が痛い……」

「笑いすぎでしょう!」

 ダフネがビクトリアに抗議しています。


 ヴィーナスが、そんな二人を無視して、「良く効くのですか?」と聞いています。

「それはもう、不思議な事に害虫だけが退治されます」

「しかもまいた後は土が肥えるのです、その為に作物が良く育ちます」


「肥料なら悪臭を伴う、肥溜めの臭い」

 アテネが真面目な顔で一言いいました。


 再びビクトリア、笑いに笑いました。

「ひっ、ひっ、駄目だ、横隔膜が引きつった……息も苦しい……」


 さすがにダフネさんもシュンとしています。

 しかしヴィーナスは何か真剣な顔で考えています。



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