悪事は割が合わないという事


 その夜、領主の館の浴室に『人食いなまず』が放り込まれていました。

 その中に見覚えのある服を着たままの白骨死体が……


 以来、その領主はおとなしくなったそうです。

 同時刻、そっくり同じことが、カルシュの町の何処かの商会の経営者の自宅で起きました。


 こちらは侍女が二三人、卒倒したそうです。

 経営者はすぐに意味がわかったそうで、投資した金の回収を諦めた様子です。


 プルーナの父親は小さいタンコブをこさえて帰ってきます。

「訳がわからん……」

 と呟きました。


 次の日、二人は小雪先生に呼び止められました。

「二人共、私に手作りのお菓子でも作ってきてね」


 突然で意味が解らない二人ですが、次の一言で意味がわかりました。

「お父様のタンコブは仕方なかったのです、でももう良からぬことは起こらないでしょう」


 以来、二人は小雪の辞める日までの四五日、毎日手作りのお菓子を作りました。

 授業が終わった後、手作りのお菓子を抱えて小雪の部屋へ押しか、お茶を飲んで過ごしました。

 この日を境に、工事は順調に進んだみたいです。


 最後の授業が終わり、小雪先生がカルシュを離れるとき二人はすがりついて、

「ありがとうございます……」


「それ以上はいわないように、また会える日もあるでしょう」

「私に用があればアンジェリーナ顧問にいいなさい、なんとか都合をつけましょう」


「いままで良く頑張りました、人の行動はどこかで誰かが見ているものですよ」

「恥ずべき行いをせずにいれば、何とかなる時も有るものですからね」


 その後、プルーナの家は再び裕福になり、プルーナは幸せな結婚をしたそうです。

 エルメリンダはといえば……

 『学問の府の女子部』の、測量学と算盤の講師になりました。


 時々、二人はカルシュの茶館で、お茶を楽しみますが、稀にそこに小雪もやってきます。

 今日も……


「小雪先生……今日はこのようなお菓子を作って来ました」

 茶館に堂々とお菓子を持ち込んで、広げている二人ではあります。


    FIN



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