女学生は苦手
小雪の授業はスパルタです。
アンジェリーナにいったように、体罰は当然、理解出来ない者は、理解できるように体で覚えさせます。
理屈は理解できなくても、身体は覚えている主義、測量学などはその最たるもの……
「分からなければ何故はいらない、分らない者はまる覚えしなさい、それでも覚えられないものは、身体に叩きこんであげます」
でも小雪は一つ計算を間違っていました。
軍隊式のこの授業、学ぶ相手は女なのです。
小雪が厳しく授業をしていますと、約三割の女が理解出来ない様です。
「そこの学生、ついてこられないなら、授業を受ける必要はありません、退席しなさい」
小雪が冷たくいいますと、中には泣き出すものがいるのです。
ここで泣きながら抗議するような相手なら、クールビューティーな小雪、取り合うはずもありませんが、ほとんどの女はただ黙って泣くのです。
小雪の一番苦手なタイプですが、『学問の府の女子部』の女生徒には、こんな生徒が圧倒的に多いのです。
どうやら、大事に大事に育てられたお嬢様たち、こんな扱われ方は一度として受けたことがないお嬢様たち、そして事態はややこしい方向へ。
「想定外です!予定外です!困った……」
ある日の授業が終わった小雪は、疲れを取ろうとイーゼル温泉に転移しました。
小雪たちが付けているチョーカーは、イーゼル温泉に転移できるようになっているのです。
愛人たちの福利厚生?らしいのですが、その一室で小雪がこぼしています。
相手は、友だちのアナスタシアと、愛人仲間のビクトリア、そしてサリーの妹、マリーです。
アナスタシアが、
「珍しいわね、小雪さんが愚痴をこぼすなんて……」
「しかし気持ちはわかる、私なら同じようにするだろうし、同じようにこぼすだろう」
「最も私に講師など頼むものはいないが」
と、ビクトリアが云います。
しかしマリーが、
「でも女は涙が武器と、本能的に知っているのですよ、困ったら無意識に涙がでるのです」
「誰かが自分の涙を気にしてくれないかなと、期待を込めて泣くのですよ」
「だから期待どおりに慌てた小雪さんに、親近感を感じたりするのですよ、この人は私を見ているってね」
「そして尊敬の中に、可愛いという気持ちが湧いたのでしょう、そしてそれを横目で見ている女たちも、同じような気持ちが湧いた」
「そのあたりが今回の出来事の説明ではありませんか?」
「とにかく、この対処方法は、ヴィーナス様に聞くしかないのではないでしょうか……いや……待って下さい……もう一人いましたね……この手の問題の専門家が……むしろヴィーナス様より適任では……この方に相談するのが一番……」
アナスタシアが、
「マリーさん、勿体ぶらずに早く名前をいいなさい」
「アンリエッタ首席女官長ですよ」
四人は膝を打ちました。
確かにアンリエッタ首席女官長なら、この手の問題のスペシャリスト……
なんといっても女の園に長年いて、いまは巨大な女の園の最高責任者、対処方法を教えてくれるはずです。
「アンリエッタ首席女官長なら、女同士の恋愛問題など、どうすればよいか教えてくれるに違いない」
そう、小雪が直面する問題とはラブレター……
女学生から付け文が大量に来るのです。
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