これはこれで好いわ
「黒の巫女さま……私のあるじ様……」
さすがのダイアナも言葉がありません。
「叔母さま……なんとかならないものでしょうか?」
「私……どんなことでもしますから……」
「……努力する?」
「二言はありません!」
「貴女は美しい、容姿だけなら有資格者ですが、わかるでしょう?」
「女を磨きます、どうしてもあの方のお側に仕えたい!」
「巫女様の周りには、私なんか比べ物にならないほどの、美しい方がたくさんいますよ」
「特に愛人と呼ばれる方々の美しさといったら……そんな中で貴女、うまくやれますか?」
「今まで通りのお気楽な生活はできませんよ」
「私がんばります!」
どのようにがんばるつもりなのかは、考えていないのですが、ダイアナさん、心意気だけは立派です。
結局、ダイアナが可愛いシルビアとしては、自分にいい訳しながら推薦することにしたのです。
身びいきじゃないわよ、ダイアナは綺麗なのだから……
それに領民には、それぞれの人生があるのだし、ここは私たちが犠牲になるべきよね、そうですよね……
ささやかな女の幸せを捨てるのだもの、けっして贔屓じゃないわ……
「ダイアナちゃん、聞いたわ、巫女様の寵妃になるのだって?」
「まだ決まったわけではないの」
「大変よ、巫女様のお側には綺麗な方が目白押しよ」
「そうそう、私、アナスタシア様を見たことがあるわ、同じ女と思ったら悲しくなったわ」
「あんた、比べるのが間違い、アナスタシア皇女様よ、人種が違うのよ!」
「人種は同じでしょう、目もあれば鼻もあるわよ!」
「違うわよ、アナスタシア様は美女という人種、貴女は美女ではない人種」
「うまいわね」
相変わらずの街のおばさんたち、でもダイアナは不思議と落ち着くのです。
「ねえ、巫女様に好かれるには、どうしたら良いの、叔母さまは女を磨けっていうのよ」
「私が思うには、ダイアナちゃんは、そのままのほうがいいと思うわ、だって今更遅いでしょうし」
「そうそう、貴女のすっとぼけた所が魅力なのよ」
「褒められているとは思えないわ……」
「あるがままよ、変に考えこむと、歯車が悪く回るわよ!」
「そうよそうよ、生きていりゃあ、どこかではずみ車を回す時が来るのよ」
「その時に、間違った方向に回さないようにね」
「おばさんの忠告よ、迷ったときはあるがままよ!変に取り繕うと、スカの男をつかむのよ」
「あんた、スカを掴んだの?」
「すこしばかりね、逃したのよ、いい男をね、あんとき、素のままで勝負すりゃあ、よかったといまでもおもうわ」
「でもあんたの旦那、ブ男だけど悪くはないわよ」
「そりゃあ、経験を生かして、プッシュしたのさ、私はこうなのよって、そりゃあ押したわよ」
「ごちそうね」
「ダイアナちゃん、あるがままよ、女は裸で勝負するのよ」
「裸ってのは心の裸よ、もっとも身体の裸も、必要だけれどね」
「分かったわ、私、巫女様の前で、素っ裸で勝負するわ!」
「そうよ、その意気よ!」
この時から、ダイアナの能天気ぶりはパワーアップ……
シルビアの眉間の皺はますます深くなり……
でも、こうも思えるようになって来ました。
これはこれで好いわ……
FIN
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