最急降下

@sekb

第1話

死に向かう努力をするわけでもなく死ぬ気もないくせに死にたいと呟く。この四文字に変わる、もっと適切な言葉があるのではないかと思い続けていた。


その答えはあっさりと見つかった。それは憂鬱である。しかし、これが自分の気持ちを表す最適解であるはずなのだが、どうもしっくりこない。その理由は憂鬱という言葉は非常に発音しにくいからだ。


言葉を発することでフラストレーションを晴らそうとしているのに、憂鬱という表現を憂鬱という言葉で発音する事が憂鬱な気分の人間をさらに憂鬱にさせてしまう。日本の自殺率が高いのは日本語という言語において憂鬱という言葉と発音に関するバグのために代わりに死にたいと発言してしまう事が原因なのかもしれない。


これからも私は死にたいと言い続けるだろう。しかし今までと異なるのはその言葉の意味が示すところは憂鬱であり、死にたいと言いながら全く死を望んでいない自分を責めることが無くなるということだろう。

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