独奏と背景
「帰ったら、すぐにお仕事ですか?」
「えぇ。と言っても、しがない喫茶店で、時たまピアノを弾くだけですが」
「そんな贅沢なこと言わないでくださいよ」
「そういう木下さんだって、すぐに巡業に戻るって言ってたじゃないですか」
「巡業だなんてそんな。ただの伴奏弾きですよ」
「自分のピアノを聴いてくれる観衆がいるなんて、羨ましい限りです」
「そういう霧生さんだって、ご自身の好きな曲を、好きなだけ弾けるじゃないですか」
「聴いてくれる者のいない独奏ほど、虚しいものはありません」
「好きでもない曲を弾き続けるほど、悲しいものもありません」
「そういうものなのでしょうか」
「そういうものなのですよ」
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