白杖と傘

ルム

霧生さんと木下さん

 「どうも、お久しぶりですね」


 「あれ。もしかして、霧生さんですか?」


 「一週間ぶりですかね」


 「はい。最後にもう一度だけ、足を運んでみようと思いまして」


 「そうですか。その方がいい」


 「しかしよく、私だってお分かりになりましたね」


 「耳だけは幸い、良い方なので」


 「そうですかそうですか。霧生さんはあれから、ずっとお越しになられているのですか?」


 「いえいえ。私も木下さんと同じです。一週間ぶりで、最後に何となく、です」


 「確かに、その方が良い」


 「どうせ一週間もいるんだと思ってしまうと、恥ずかしながら、ここに来るのがね」


 「なんだか、億劫になってしまいますよね」


 「お互い、何だか無駄なような事をしてますね」


 「あっはっは。周りから見たらきっとそうでしょうな」


 「ここに来たら、何かが変わるかもと思っていたのですがね」


 「私も。何一つ、変わりませんでした」


 「目でも見えていれば、きっと何かが変わったんでしょうか」


 「いやいや、見えても多分、たいしたモンじゃないですよきっと」


 「そう思いますか?」


 「すいません、強がりました」


 「そうですよね」


 「見えたら、何かすごい事でも待っていたのでしょうか」


 「分かりませんけど、きっと何かが変わったような気がします」


 「そんなもんでしょうか」


 「そんなもんなんですよ」

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