第114話 ピスガ・ジェベルの炎上

こうして彼らは救出された。


死の断崖から脱出した4000人のウィスタリア人は、天に拾われた命に感謝し、

お互いに、あるいは救世主の水兵たちと、てんでばらばらに抱擁し合った。


歓声と涙でごった返す甲板から、

やっと立ち上がれるようになったアマリリスは一人、遠ざかって行く岩山を見ていた。

アムスデンジュン軍が腹いせに火を放ったのだろうか、

山頂の難民キャンプからは赤い火の手が上がり、わずかに巻雲の浮かぶ晩秋の空に向けて黒い煙を吐いていた。

炎に包まれるピスガ・ジェベルを、アマリリスはじっと見つめていた。


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