落城
第112話 陥落のとき
今や風前の灯となったウィスタリアの陣地では、最後の、絶望的な戦いを挑んでいた。
土嚢の上に何列にも
真横にいるものが被弾して倒れるのも構わず、
砲弾が立て続けに防壁の上に落ち、爆煙が全てをめちゃくちゃに吹き飛ばした。
ウィスタリアの火線は、完全に沈黙した。
舳岩から
半月刀の林が灼熱の太陽にギラリと光り、生き残っているウィスタリア人を一人残らず切り刻むべく、
アムスデンジュン軍は突撃の構えに入った。
そのとき、空気を切り裂く音と共に何かが彼らの頭上を通過し、
追い詰められたウィスタリア人と、迫り来るアムスデンジュン軍を隔てる鞍部で炸裂した。
続けて一弾、もう一弾。
振り仰ぐと、太陽を背に頭上に浮かぶ、一隻の黒い影があった。
三連の推進翼がゆっくりと回り、いくつもの砲門が、対峙する2つの集団の間に向けられていた。
船底には、ラフレシア海軍の紋章が描かれていた。
二つの陣営に、短い沈黙が流れた。
やがて崖ぎわのウィスタリア人の側からぽつぽつと声があがり、
一体この疲弊しきっていた集団の、どこにこんな元気が隠れていたのだろうと思うような大歓声が、ピスガ・ジェベルに響き渡った。
アムスデンジュン勢はいまいましげに、それを眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます